コラム

【2020米大統領選】前回予備選で旋風を起こしたサンダースの意外な苦戦

2019年05月31日(金)15時30分

サンダース自身も現状には危機感を覚えている(ニューハンプシャー州での集会、筆者撮影)

<2016年の民主党予備選でヒラリーと激しい戦いを繰り広げたサンダースだが、今回の予備選ではかつての支持者からも「過去の人」扱いに>

2016年の大統領選では、ヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースが民主党の候補指名を争う予備選で激しい戦いを繰り広げた。この戦いは民主党首脳部に対する反乱に近い形にまで発展し、それぞれの熱心な支持者に苦い後味を残した。今でも「民主党のエスタブリッシュメント(上層部)がサンダースから予備選の勝利を奪った」と語るサンダースの支持者や、「サンダース支持者がヒラリーを悪者にしたことが本選での敗北につながった」と恨むクリントン支持者がいるほど傷は深い。

2016年の予備選だけを見ると、クリントンが出馬していない2020年の大統領選では、サンダースは容易に民主党の指名候補になれそうなものだ。ところが、サンダースは2016年の予備選で楽勝した地元で意外にも苦戦している。

サンダースは2007年からバーモント州選出の上院議員(無所属)を務めており、その前は下院議員、同州バーリントン市長を務めていた。バーモント州だけでなく、隣接する ニューハンプシャー州でも以前から知名度が高く、2016年の民主党の予備選では、バーモント州で85%以上、ニューハンプシャー州で60%以上の得票率でクリントンに勝った。

ところが、5月20~22日にかけて行われた最新のニューハンプシャー州の世論調査では、ジョー・バイデン元副大統領が33%の支持でトップを走り、2位のサンダースは12%とかなり引き離されている。しかも、マサチューセッツ州選出の上院議員であるエリザベス・ウォーレンが11%、最近名前が知られるようになったインディアナ州サウスベンド市長のピート・ブーテジェッジとカリフォルニア州選出上院議員のカマラ・ハリスがどちらも7%で後を追っている。

大統領選挙のサイクルで同時期である4年前の5月26日、サンダースはかつて自分が市長を努めたバーリントン市で公式な出馬表明の政治集会を行った。そのときには約5500人が集まったのだが、今年の5月25日に州都モントピリアで行われた集会には1500人程度しか集まらなかった。サンダース陣営は3200人が集まったと報じたが、地元の新聞は「市は3000人から5000人を予期していたが」「驚くほど迫力に欠ける約1000人の支持者」と書き、警察は「1500人以上ではない」と陣営の発表数を否定した。

また、2015年5月27日にサンダースがニューハンプシャー州で行った3つのイベントには合計約1000人が集まったのだが、今年の5月28日にニューハンプシャー州で行ったイベントではそれよりやや少ない人数しか集まらなかった。前回の予備選の後半には、サンダースの集会は最大3万人の観衆を集めた。現在はまだ今回の予備選の前半だが、すでに知名度があってスター的な存在の大統領候補なら、もっと多くの人が集まるはずだ。

筆者が参加したニューハンプシャー州ロンドンデリー市でのサンダースの集会に集まったのは約200人と報じられているが、50人ほどは報道関係者であり、実際の聴衆は150人程度だった。熱心な支持者も確かにいたが、多くの人はまだ支持する候補を決めておらず、他の候補の集会にも参加していた。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story