コラム

ナイキCMがマーケティング戦略的に正しい理由

2020年12月08日(火)18時20分

決して安くないナイキ製品をわざわざ購入する人は、ブランドの持つ価値観や信念の格好良さに加えて、仲間意識にもお金を払っている。敵がいると仲間意識が強くなることは、現在のアメリカ政治も示している。ナイキジャパンのCMをたたく日本人は多いようだが、彼らはもともとナイキのバイヤーペルソナではない。彼らがCMを叩けば叩くほど、メッセージを肯定したくなる人は出てくるだろう。

また、ナイキのCMを見るのはその国の人だけではない。アジアでは、中国などのほうが日本よりはるかに重要な市場となっている。バイヤーペルソナではない人々が「日本をおとしめるな」と怒るのは、多くの意味で的外れだ。

<本誌2020年12月15日号掲載>

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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