コラム

日本人が知らないリバタリアンの国際会議「アジア・リバティ・フォーラム」

2020年04月22日(水)15時15分

日本では自由経済とは何かという議論が十分になされていない...... pixelfit

<4月22日・23日、日本ではほとんど知られていないが、自由主義系シンクタンクのキーパーソンが結集する国際会議が行われている......>

4月22日・23日2日間にAsia Liberty Forum 2020という国際会議が新型コロナウイルスの影響を受けて初のオンライン会議として開催されることになった。このフォーラムは元々はフィリピンのマニラで3月中旬に世界中から多くの参加者が集う一大イベントとして予定されていた。しかし、主催者判断で渡航制限・外出制限が横行する中、今回は初のオンライン開催という運びになった。

日本では全くメジャーではないが、同フォーラムは知る人ぞ知るリバタリアン系運動団体の国際会議の1つである。この国際会議にはアジア各国の自由主義系シンクタンクのキーパーソンが結集し、お互いの生存確認と情報交換が行われる。アジア諸国の参加メンバーが持ち回りでホスト国を担っており、開催ホスト国からは政権中枢のメンバーが来賓として挨拶をすることも多い。

具体的には、政権及び議会関係者と強力のネットワークを持つ学識者及び活動家が集い、最新の減税や規制廃止に関するベストプラクティスや世界情勢についての意見を交換することがメインだ。全体主義的な傾向がある国からの参加者は自国における激しい弾圧についての報告がなされることもある。筆者も可能な限り同イベントには参加し、新たな学びの刺激を受けるようにしている。同会議の欧州版で対になる国際会議も年1回のペースで欧州各地で開催されており、ハイエク研究所などの自由経済を主導する由緒正しい組織の代表なども参加する。

日本では知られていない自由主義系シンクタンクのネットワーク

Asia Liberty Forumをネットワークしている存在は、米国のワシントンD.Cに本部を設置しているAtlas Networkだ。この組織は全世界80か国以上、500以上の自由主義系シンクタンクをネットワーキングしており、世界中で展開される自由主義経済の草の根運動の旗振り役となっている。現在、トランプ政権がFRB理事に推薦しているシェルドン博士なども同組織に在籍していた経済学者だ。

その主なミッションは自由主義経済に関する基礎的な考え方を各国で拡げる教育・啓発運動を支援するというものだ。したがって、理念を同じくする世界中のシンクタンクが相互に協力関係を構築すること、そして社会主義的傾向が強くなりがちな大学などの教育機関で自由経済を学ぶ学生団体の組織化支援などが行われている。

前述の通り、このネットワークの存在は日本ではほとんど知られていない。同ネットワークはかつて日本に同じ自由主義の理念を持ったパートナーとなる大学関係者・シンクタンクを求めてアプローチしたが、一部の有志の人々が関心を示したのみであり、他国で見られたほどの熱心な反応は日本からはなかったそうだ。某国立大学系の方々にアプローチした際など、一度フォーラムに参加しただけでその後は何もアプローチがなかったとのこと。然もありなん。

筆者も同ネットワークを持つ数少ない日本人の知己に推薦されて関係を持つ機会を得たが、このフォーラムに参加している日本人を他に見たことが無い。語弊を恐れずに表現するならば、同ネットワークからは日本は自由経済に関する強い意欲はないと判断されており、日本人は後回しまたは相手にされていない状況となっている。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのミサイル、イランの拠点直撃 空港で爆発

ビジネス

日経平均は1100円超安で全面安、東京エレクが約2

ワールド

イスラエルのイラン報復、的を絞った対応望む=イタリ

ビジネス

米ゴールドマン、24年と25年の北海ブレント価格予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story