最新記事

キャリア

逃げ切りたい中高年は認めたくない? ミレニアル世代が高給でも仕事を辞める理由

2018年08月06日(月)15時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

<「職場に座っていると、自分の一生が見えた。週に50時間働き、毎年10日間の休暇を取る」 そんな未来ちっとも魅力的じゃない>

燃え尽きたミレニアル世代は給料の高い仕事でも辞めている――

20代のサラ・ソロモンはとても素敵な生活を送っていた。ニューヨークのダウンタウンにあるPR会社で広報の仕事に就き、ファッションのイベントやディナー、パーティに顔を出していた。ファッションウィーク中にはジョン・レジェンドと遊んでいた。

「それこそ、絵に描いたようなニューヨーク生活だった。ブラックドレス、レザーパンツにハイヒール、そしてたっぷり1時間かけメイクする...」というソロモンの話をFOXニュースは伝える。「誰もが私が本当に楽しい生活を送っているように見えたと思う。クールな人々やセレブリティに会って」

忙しいながらも、周囲に羨ましがられる華々しい生活。しかしある日突然、魔法は解けた。きっかけは2週間の休暇。彼女は休み明けに、ひどく腹が立ったという。そしてすぐに辞める決意をして、あれだけ夢中になった煌びやかな業界を去ってしまった。

生活費も必要だけど、自由にはそれ以上の価値がある

ソロモンが仕事を辞めた理由は、結構あっさりしている。「もっと旅がしたかった。それに休み時間の度にお伺いを立てたくないし、必要以上に煩わされたくなかった」と、現在ハワイのカウアイ島の賃貸住宅で暮らす25歳になったソロモンは海を眺めながら語った。

ニューヨークの生活と仕事をきっぱり捨ててから、約10カ月かけて、彼女はグアテマラで火山に登って、インドネシアのバリで滝に打たれ、途中世界中の輝かしいビーチで日光浴をした。

旅の途中でフリーランスPRの仕事を得たので、ちゃんとしたWi-Fi環境がある限りは楽園にいながら働くことができる。もちろん、最前線でばりばり仕事をしていた頃より収入は減ったことは認めているが、自由にはそれほどの価値があるという。「これは新しい働き方。世界は変わっている」

ソロモンの交際相手ティム・メイソンもまた、「クワイター(辞めた人)」だ。メイソンは以前、ニュージャージー州でも有数のコンサルティング会社に勤め、ソフトウェアの営業としてトップセールスの座にいた。

仕事には何ら問題はなかった。名の知れた会社で高給。年収は10万ドル(約1100万円)以上あった。順調にしか見えないキャリアをスタートさせ、まだまだこれからという26歳の時、メイソンはふとこう思った。「自分はなぜ20代をデスクで過ごそうとしているのだろう」と。

自分たちが年を重ねたころには、今よりも定年は上がっている。もしかしたら70代になるかもしれない。そんな未来を考えると、いま現在のデスクワークが、たちまち退屈なものに感じられた。「職場に座っていると、自分の一生が見えた。週に50時間働き、毎年10日間の休暇を取る」という今の延長線上にある、分かりきった未来はちっとも魅力的だと思えなかった。

2人は、たまにスキューバダイビングやPRの仕事をして暮らしている。貯蓄の有無は不明だが「今は何も不安はない」と、日々の生活を満喫しているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

記録的豪雨のUAEドバイ、道路冠水で大渋滞 フライ

ワールド

インド下院総選挙の投票開始 モディ首相が3期目入り

ビジネス

ソニーとアポロ、米パラマウント共同買収へ協議=関係

ワールド

トルコ、経済は正しい軌道上にあり金融政策は十分機能
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    ロックンロールの帝王を捨てた女性の物語、映画『プ…

  • 4

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 1

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    「テニスボール貫通ピンヒール」の衝撃...ゼンデイヤ…

  • 5

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 1

    キャサリン妃とウィリアム皇太子の「ご友人」...ロー…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 4

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 5

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:老人極貧社会 韓国

特集:老人極貧社会 韓国

2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる