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「スローフード」のイタリアから、今度は「スマホデトックス」の波

2018年09月14日(金)17時40分
田中美貴(イタリア在住ライター)

スマホ片手に乾杯、は無粋? (写真はイメージ) ArtMarie-iStock

<「格好悪いから」との理由で広まるのか...イタリアのスマホデトックスムーブメントに注目>

調査会社ニールセンデジタルが発表した日本国内のスマートフォン利用状況によると、2018年3月の1人1日あたりのスマホ利用時間は3時間7分で、前年比17分増という。それでも日本は利用時間が短いほうで、市場調査会社カウンターポイントの2017年10月の調査では、世界のスマホユーザーの半数近くが1日5時間以上をスマホに使っているそうだ。

イタリアも状況は似たり寄ったりで、スマホ中毒はもはや社会問題になるほどだが、その一方で、スマホを持たない時間を持つことが新しいトレンドになり始めそうな動きがある。

これまでも、ファストフードに対して唱えられた「スローフード」をはじめ、急激なグローバリズムに対して、しばしば対抗ムーブメントが起こってきたイタリアらしいと言えるかもしれない。

象徴的なのが、伊コリエーレ・デラ・セラ紙に掲載された、ファッションデザイナーのステファノ・ガッバーナがインスタグラム上で「スマホデトックスのためインスタ一時休止」を発表したことだ。

イタリアブランドとしてはいち早くインフルエンサーやセレブを巻き込み、SNSを前面に押し出した宣伝活動のトレンドメーカー的存在だった「ドルチェ&ガッバーナ」だけに、今回の「スマホデトックス」が次なるトレンドになるのか注目されている。

すでにミラノでは、仕事が終わった後の夕方の習慣となっている「アペリティーボ」にもそのムーブメントが来ている。アペリティーボというのは、食事の前に軽食を食べながらお酒を楽しむことだが、ミラノ中のお洒落なバーがこぞっておこなっている「ハッピーアワー」的サービスのことを指す。

この度ミラノの人気バー約20軒が、9月12、19、26日を「スマホ禁止デー」と制定し、アペリティーボ中のスマホ使用を禁止(または制限)すると発表した。禁止デーはスマホを専用ボックスに入れることが義務付けられ、店の中では使用禁止だという。

また、国営放送局RAI(イタリア放送協会)のニュース24が、店の入り口でスマホを回収して詩集と交換し、食事中にはアプリではなく詩を楽しんでもらうというロマンチックなサービスを行うローマのレストランを紹介した。

レストラン関係者曰く「残念ながら食事中もスマホばかりを見て会話をしないカップルがたくさんいるのを見て」このアイデアが生まれた。「今までのところ特に問題は起きていません」とのこと。

滞在中にスマホを使わなければ料金割引のホテルも

ホテルでもスマホ不使用を推奨するところが出てきた。コリエーレ・デラ・セラの旅行版サイトであるドヴェは、スキーリゾート地としても有名なスイス国境近いリヴィーニョの数軒のホテルが、チェックインの際にスマホを預けてチェックアウトまで使わなければ、ホテル代を割引するというサービスを行っていることを紹介している。

スローフードの流行を作ったイタリアから、今度は、スマホに常にかじりついているのは格好悪い、プライベートの時間にはスマホを完全に切り離すのがお洒落...という「スマホデトックス」の波が広がっていくだろうか。

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