最新記事

夫婦間レイプ

「私を犯した夫を訴える...」 夫婦間レイプとの向き合い方をフランスと日本から考える

2019年05月23日(木)18時35分
西川彩奈(フランス在住ジャーナリスト)

レイプ被害者という自覚がないことも(写真はイメージ) 4x6-iStock

<配偶者から性暴力を受ける「夫婦間レイプ」。パリ在住ジャーナリストが現地DV被害者女性のディスカッショングループに参加。また、日仏の弁護士が「夫婦間レイプ」にまつわる法律を比較する>

妻や夫から、合意なく性的な行為を強要される「夫婦間レイプ」。一般的に「夫婦」という関係にも「レイプが成立する」という認知が低く、実際に「自分が配偶者からのレイプの被害者となっていること」に気づいていない人も少なくない。

内閣府による調査では、異性から無理矢理性交をされた女性(117人)のうち、19.7%が配偶者・元配偶者からの被害だったと回答。筆者が拠点とするフランスでは、内務省の報告(2017年度)によると性暴力や性的攻撃の被害者のうち約3割の女性が配偶者、又は元配偶者からによる被害だったと挙げている。

同じ屋根の下で暮らす夫婦という間柄だからこそ、「曖昧」な事件となりやすく、フランスでも日本でも「タブー」となっている夫婦間レイプ。今後、どのようにこの「タブー」に向き合っていけばいいのか――。

パリでそのヒントを求めるため、DV(配偶者や恋人からの暴力)を受けた女性の状況改善を支援する団体「ELLE'S IMAGINE'NT(エルシマジン)」を訪れた。また、記事後半では日仏の法律専門家による、「夫婦間レイプ」にまつわる法律の徹底比較をお届けする

パリでDV被害者の女性を迎えるアソシエーション

パリ14区に位置する、20世紀初頭に造られた石造りの建物の一室。ドアを開けると、ほんのりとバニラの香りが漂い、ボサノバ風の心地よい音楽が流れる。パステルカラーを基調にしたアパルトマンの室内は、まるで女性の隠れ家風の空間だ。

2007年にDV被害者の女性を支援する団体「ELLE'S IMAGINE'NT(エルシマジン)」を共同創設した臨床心理士のソニア・ピノ氏は、「心が傷ついた女性が訪れたときに、ホッと安心できる場所であってほしい」と優しい口調で語る。

1.jpg
DV被害者の女性を支援する団体「ELLE'S IMAGINE'NT(エルシマジン)」の共同創設者で、臨床心理士のソニア・ピノ氏(Photo: Ayana Nishikawa)

室内では、ボランティアのスタッフたちがフランス中からのDVの電話相談に対応。別室では心理カウンセラーが被害者の話に親身に耳を傾けている。ここに訪れる女性は、パートナーから心理的攻撃、身体的暴行、性的強要などのDVを受けた女性たちだ。この団体では、各被害者の状況に合わせて、司法プロセスの案内や心理的なサポートをしている。2018年には、320人のDVの被害にあった女性がサポートを受けた。

一見、よくある女性援助団体のようだが、特別な点は何なのか。前出のピノは、創設のきっかけをこう語る。「パリには、DV被害者の女性同士がグループで話し合う機会が少ないのです。一方で、DV被害者の女性たちにとって最も大切なのが、同じ経験をした人たちと話すこと。なので、女性たちが会話できる場を設けるために団体を創設しました」

「話す」ことが、どれほどDV被害者にとって効果があるのか――。週に1度開かれるという、被害者の女性たちが集まるグループディスカッションに参加した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

第1四半期の中国GDPは予想上回る、3月指標は需要

ビジネス

トヨタ、富士松工場第2ラインを17日から稼働再開

ワールド

スーダン内戦1年、欧米諸国が飢餓対策で20億ユーロ

ワールド

香港の国家安全条例、英では効力なく市民は「安全」=
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    「テニスボール貫通ピンヒール」の衝撃...ゼンデイヤ…

  • 5

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 1

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 4

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    キャサリン妃とウィリアム皇太子の「ご友人」...ロー…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃がついに「成功の波」に乗った!?...「追い…

  • 4

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 5

    英国でビーガンが急増、しかし関係者からも衝撃的な…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:老人極貧社会 韓国

特集:老人極貧社会 韓国

2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる