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平野美紀|オーストラリア

【新型コロナ】オーストラリアは冬に本当に感染拡大したのか?

1854年に完成したメルボルン中心部にあるオーストラリアで最も古い駅舎フリンダース・ストリート駅

北半球より一足先に冬を迎えていた南半球のオーストラリア。

これから本格的な冬を迎える日本では、季節性インフルエンザも冬場に流行することから、新型コロナウイルスの感染拡大についても早い段階で「冬」に注目が集まっていた。

折しもちょうど冬を迎えていたオーストラリア第二の都市メルボルンのあるビクトリア州で、感染が急速に拡大し、2度目のロックダウンになったことも手伝って...

感染拡大したのはビクトリア州のメルボルン周辺だけ

日本では「オーストラリア」のことを報道する際、シドニー以外の都市名があまりポピュラーではないこともあって、どうしても「オーストラリアで」という見出しになってしまっているところがある。

オーストラリアという国は、日本の約20倍もの面積があり、ほぼアメリカ本土(アラスカ州を除く)と同じくらい広い。気候は北と南ではずいぶん異なり、「冬」といっても北のダーウィン(ノーザンテリトリー準州)では7月(だいたい北半球の1月に相当)の日中気温が30℃を超えているし、南のホバート(タスマニア州)では平均12℃とかなり差がある。その上、内陸は乾燥した砂漠地帯で海沿いは湿潤な気候だ。このように一概に、日本人の想像する「冬」と一括りにできない。

ただ、感染拡大していたビクトリア州は、オーストラリア本土の南に位置し、日本のように四季があり、冬は確かに寒い。とはいえ、7月の平均気温は14℃程度、寒波の影響で数年に一度くらい雪がチラつくことはあっても積もることはなく、10℃前後の東京などから比べると割と暖かいと感じるだろう。

寒さが感染拡大を加速させるのだとしたら、メルボルンよりもさらに南に位置していて寒いホバートのほうが、リスクが高いはずだが、そうはならず、メルボルンを中心とした周辺エリアだけで感染拡大した。

州によって異なるコロナ対策

メルボルンで再び感染がアウトブレイクし始めた6月頃、オーストラリア国内における新規市中感染は、シドニーのあるニューサウスウェールズ州が0もしくは1桁、それ以外のすべての州が0を達成していた。ちなみに、6月16日付けの豪ABCニュースで振り返ってみると、オーストラリア国内の新規感染ケースは12人で、内クラスターが確認されたビクトリア州が9人、ニューサウスウェールズ州の3人全員が海外からの帰国者で、新規市中感染はビクトリア州のみとなっていた。(参照

オーストラリアでは、国として新型コロナウイルス対策の指標があるものの、連邦国家であるため、実際に対策を決定し、実施するのは州政府の権限によるところが大きい。そのため、州毎に対策が異なり、また、こうした感染症パンデミックに対する普段からの備えも異なっている。

豪国内の感染症の第一人者でもあるカービー研究所のライナ・マッキンタイア氏は、ニューサウスウェールズ州が、この20年間、公衆衛生インフラを含む医療システム整備に力を入れ、投資してきた間、ビクトリア州は丸裸状態で何もしてこなかったと指摘。また、ビクトリア州は、人口一人当たりの公衆衛生インフラと資源に関しては、オーストラリア国内の他州と比較し、はるかに悪い状況だという。(参照

オーストラリア第三の都市ブリスベンのあるクイーンズランド州は、人口規模はニュージーランド一国とほぼ同等(クイーンズランド州のほうが30万ほど多い)ながら、早期に徹底した州境規制を敷いて州民に注意喚起し、現時点で感染者総数1,187、死者数はわずか6名、4月中旬以降の新規市中感染はほぼ0と、感染症対策は世界の中でもかなり優秀だ。

Coronavirus-COVID-19-QLD.pngクイーンズランド州の新型コロナウイルス感染ケース数の推移(ソース:Google News



メルボルン周辺だけで感染拡大したのはなぜか?

上記のようなビクトリア州の公衆衛生に対する脆弱さは、感染拡大する要因...というか、感染拡大を止められなかった要因として大きく影響したと思われるが、とくに強く指摘されているのが、『隔離の失敗』である。

国内で行われた調査の結果、メルボルン周辺における感染拡大の最大の要因は、「海外からの帰国者を検疫隔離するために業務提携していたメルボルン中心部のホテルでの管理の杜撰さ」であると指摘されている。(参照

検疫隔離ホテルに勤務していた派遣の警備員が、きちんとした公衆衛生対策を習得することなく、わずか3分程度のトレーニングという未熟な知識と脆弱な装備で勤務し、不当に低い賃金で雇われていたため、その他の仕事と掛け持ちで業務に当たっていた。そして、警備員が検疫中の宿泊者と親密になり、本来なら許可されていない外出を見逃したり、深夜勤務の警備員が廊下でゴロ寝していたことなどが発覚。(参照

さらには、ホテル内の清掃が行き届いておらず、前の宿泊者が退出した部屋のシーツなどの交換がされずにそのままであったり、ゴミが片付けられてなかったことなども、宿泊者の証言で明らかになった。(参照

こうした状況の中、海外からの帰国者が感染確認されるケースが多く、そうした人たちを検疫隔離する上記のようなホテルで働いていた警備員や従業員が感染し、自宅へウイルスを持ち帰って家族が感染。そこからコミュニティへと、急速に感染拡大していったとされる。

この「検疫隔離ホテルでの失態」が明らかになったことから、ビクトリア州の保健大臣であったジェニー・ミカコス氏が、9月26日に引責辞任に追い込まれた。(参照

この件に関しては、今後も引き続き、現ビクトリア州政府に対して踏み込んだ検証が行われる予定だ。(参照

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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