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Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア

平野美紀|オーストラリア

野生動物の楽園は、今も楽園だった。森林火災で島半分が焼けたカンガルー島

絶滅が危惧されるオーストラリアの固有種「オーストラリア・アシカ」の群れ。シール・ベイ自然保護公園にて。(2021年3月 筆者撮影)

『オーストラリアのガラパゴス島 Australia's Galapagos Island』とも呼ばれる、カンガルー島。

約1万年前の海面上昇でオーストラリア本土から切り離されたため、島に取り残された生き物たちが島の環境に適応、進化し、固有の生態系が築かれてきた『野生動物の楽園』だ。

初めてこの島を訪れた時、まさに『野生動物の楽園』だと思った。島内には、島の名称にもなっているカンガルーはもちろん、コアラやワラビーなどが多く生息し、簡単に野生下で見ることができた。海岸へ行けば、アシカやオットセイ、ペンギンなどが、間近で見られ、それはまるで『檻のない動物園』のようだったのだから。

しかし、前編に書いたように2019-2020年の大規模森林火災で、島面積の約半分、東京都とほぼ同じ面積が焼けてしまった...

あのアシカやオットセイの楽園は、どうなっているのだろうか?

そして、島の案内人・ガイレーンさんの言う『大規模な火災によって起きた新たな問題』を確かめに、まずは、1年前の火災がまだ鎮火していない時には、通行止めになっていて行くことができなかった「フリンダース・チェイス国立公園」へ向かうことにした。

壊滅的な火災に耐えた島のシンボル、奇岩リマーカブル・ロックス

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火災直後は、緑は一切ないほどの焼野原だったが、焼けた木からも新芽が吹き出し、少しずつ回復し始めていた。(2021年3月 筆者撮影)

面積の98%が被災し、壊滅的なダメージを受けたフリンダース・チェイス国立公園内には、島のシンボルともいえる奇岩「リマーカブル・ロックス」がある。

まるで自然が造り上げたアートのように、複雑で滑らかな形状をした奇岩群は、青い海を見下ろす緑の原野に忽然と現れる。岩肌は赤みを帯び、海の青と周囲を取り囲む低木の緑とのコントラストが美しい場所だ。

1年前の森林火災で、このリマーカブル・ロックス周辺は激しく燃えた。

今回、訪れてみると、周囲の低木はほぼ完全に焼き尽くされ、奇岩へと続く木道や展望台は跡形もなく焼失していた...

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赤い岩肌が海の青に映えるカンガルー島のシンボル的存在「リマーカブル・ロックス」。(2021年3月 筆者撮影)

しかし、岩は猛威を振るう火に耐え、約5億年の歳月をかけて造られた自然の造形物は、その姿をより際立たせていた。岩場を囲む原野では、燃えて炭状になった木々の根元や大地に落ちた種から新たな芽が吹き始め、以前のような風景を取り戻しつつあった。

赤い岩肌がよく見える少し高い場所に立ち、大きく深呼吸をしてみる。南極大陸から吹いてくる少し冷めたい風は昔と同じように心地よく、目の前には変わらぬ美しい海が広がっていた。

アシカやオットセイの家族が昼寝する美しい海岸へ

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幸せそうな顔でシール・ベイの砂浜に寝転ぶオーストラリア・アシカの家族。(2021年3月 筆者撮影)

島南部の海岸には、アシカやオットセイを間近に観察できるところが点在している。

フリンダース・チェイス国立公園の南西端には、「アドミラルズ・アーチ」と呼ばれる自然の造形が見どころのスポットがあり、周辺には、ロング・ノーズド・ファー・シール(旧名ニュージーランド・オットセイ)の群れが生息している。

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上/アドミラルズ・アーチ。下/周辺の岩場でくつろぐオットセイの家族。(2021年3月 筆者撮影)

壊滅的なダメージを受けたフリンダース・チェイス国立公園だが、このアドミラルズ・アーチ周辺は、奇跡的に火災から免れたそうだ。

オットセイたちは、火が迫っても海へ逃れることができるだろうが、崖下へと続くアドミラルズ・アーチの展望台への木道も無傷だったのは、まさに奇跡かもしれない。

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火災から免れたアドミラルズ・アーチ周辺。木道もそのまま残り、これまで通り、美しい海を臨むことができる。(2021年3月 筆者撮影)

また、絶滅が危惧されるオーストラリアの固有種「オーストラリアン・シーライオン(オーストラリア・アシカ)」の群れが間近で見られる南部の「シール・ベイ自然保護公園」は、火の手が回らず、無事だった。

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上/砂浜から続く緑地帯にもアシカの親子があちこちに寝転んでいる。下/アシカの近くに必ずいるオオアジサシの群れ。(2021年3月 筆者撮影)

以前と変わらず、砂浜にゴロゴロと寝ころんでいるアシカの家族。その幸せそうな寝姿に思わず笑みがこぼれ、なんだか幸せな気分にさせてくれるほど、のどかだ。

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独特の海の色が美しい「ビボンヌ・ベイ」。(2021年3月 筆者撮影)

ただ、ターコイズ・ブルーの美しい海に緑が映える手つかず自然が自慢の「ビボンヌ・ベイ」は、陸地部分の雑木林や低木の緑地に火の手が回り、かなり激しく燃えたようだった。

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ビボンヌ・ベイ周辺は激しく燃えたが、緑がかなり回復し始めているのがわかる。(2021年3月 筆者撮影)

それでも海は相変わらず美しく、静かに波が打ち寄せていた。

周囲の緑地には、新しい芽が出、再生が始まっている。来年にはもっと緑が回復し、長い弧を描く湾との美しいコントラストを見せてくれることだろう。

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Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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