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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

グリーンパス、感染下のヨーロッパ通行許可証 イタリアの場合と日本からも入国可能に

パリからローマへ飛ぶ飛行機の窓からの眺め 2012/6/16. photo: Naoko Ishii

取得条件はワクチン接種、感染して治癒、検査で陰性のいずれか、感染すれば有効期間中でも無効に

 7月1日から、イタリアでは俗にグリーンパス(Green pass)と呼ばれるCOVID-19グリーン証明書(Certificazione verde COVID-19)が全面的に有効となり、有効なグリーンパスの所持者は、ヨーロッパ連合加盟国間を旅行することができ、また、イタリア国内では、公の催しに参加したり、ケアハウスに住む家族を訪ねたり、レッドゾーンやオレンジゾーンに出入りしたりできるようになりました。

 イタリア国内では、以下のいずれかに該当する市民が、無料でグリーンパスを取得することができるようになっています。

・1回目のワクチン、あるいは1回の接種で済むワクチンの接種を受けてから15日経った人 ・ワクチン接種を完了した人

・48時間以内に受けたPCR検査または抗原検査の結果が陰性だった人

・過去6か月以内に新型コロナウイルス感染症に感染し治癒した人

 また、それぞれの場合の有効期間については、

・接種が2回必要なワクチンの場合は、1回目の接種の15日後から2回目の接種まで有効

・2回目の接種、あるいはすでに感染していて1回の接種を受けた場合は、2日以内に発行され、接種日から270日間(約9か月間)有効

・1回の接種で済むワクチンの場合は、接種の15日後に発行され、270日間(約9か月)有効

・検査結果が陰性だった場合は、検査の数時間後に発行され、検査時刻から48時間有効

・新型コロナウイルス感染症に感染し、治癒した場合は、その翌日発行され、180日間(6か月)有効

となっています。ただし、有効期間中であっても、新型コロナウイルスに感染すると、地方医療サービスや医師が、ワクチンを接種した人やすでに感染して治癒した人が陽性となった旨を通知し、国のプラットフォームが、発行済みで有効なグリーンパスを無効として、パスが無効となった人の個人情報を、無効となった証明書一覧に記載し、ヨーロッパのゲートウェイ、ネットワークの中継装置に通知することになっています。

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 最近は、イタリアでもデルタ株の感染が各地で起こっていて、ヨーロッパでは、8月にはデルタ型の変異株が主流となるだろうとさえ言われています。デルタ株は感染力が非常に強く、2回のうち1回だけのワクチン接種では防げないことから、ここしばらくはニュースで、「グリーンパスは1回目だけではなく2回目のワクチン終了後に初めて発行することになるかもしれない」と耳にする機会が多かったのですが、イタリア政府のサイトを見ると、今のところは、イタリアでは、1回しか接種を受けていなくても、その15日後にはグリーンパスが入手できるようになっています。入手の方法は複数あって、COVID-19グリーン証明書のサイト、Immuni アプリ、IOアプリなどを利用してオンラインで取得できるほか、かかりつけ医や薬局を通じて取得することもできるようになっています。

 6月12日に1回目のワクチン接種を受けたわたしは、先日気づいたら、スマートフォンにグリーンパスが発行されましたという通知が来ていたので、さっそく該当ページにアクセスして、QRコードがあるグリーンパスをダウンロードしました。わたしがダウンロードしたのは、COVID-19グリーン証明書のデジタル版ですが、ここでは、紙に印刷して四つ折りにして持ち運べる紙版の証明書の例を、ご紹介します。

img-come-funziona-1.jpg出典:COVID-19グリーン証明書のサイト

 ワクチンを接種したので取得することができたわたしの場合は、たとえばワクチンを接種した日やワクチンの種類なども、情報の記載があります。このQRコードは、確認する人には、こうした詳細情報を知らせずに、グリーンパスの取得者であることだけが把握できるようになっているとのことです。イタリアでは、グリーンパスの取得がうれしくて、QRコードの写真をSNSで共有する人がいるけれども、それでは、グリーンパスを取得した理由などについての詳細情報が、第三者に分かってしまう可能性があるので、プライバシーや差別を避けるために、共有しないようにしましょうと、先日ニュースで言っていました。

日本からはグリーンパスがあれば検査や隔離なしにイタリアに入国可能に

 6月18日の保健省令で、日本、カナダと米国からも、ヨーロッパ連合加盟国やシェンゲン協定加盟国からと同様に、イタリア入国前に居所情報に関するデジタルフォーマットに入力し、到着時に各国の保健当局が発行するCOVID-19グリーン証明書を提示すれば、検疫の義務なしに、イタリアに入国できるようになりました。COVID-19グリーン証明書は、ワクチン(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、またはジョンソン・エンド・ジョンソン)の接種を完了してから14日以上経っていること、新型コロナウイルス感染症から治癒し、陽生が発覚した最初の検査から180日以内であること、あるいは、イタリア入国前48時間以内にPCR検査または抗原検査を受けて結果が陰性だったことを証明し、イタリア語、英語、フランス語、スペイン語のいずれかで作成されていなけらばならず、デジタル版でも紙版でもよいこととなっています。

 イタリア市民に対しては、1回だけのワクチン接種でもグリーンパスを発行しているのに対し、日本など外国から来る人には、ワクチン接種を完了することを要求しています。また、旅行者にはさらに、地方保健所の予防局に、イタリア入国を通知する義務があります。そして、これはイタリア市民と同様の規定になりますが、グリーンパスは、レッドゾーンやオレンジゾーンに出入りするときに必要である上に、見本市やコンサート、スポーツの試合、宗教または民事の儀式などの公の催しへの参加に際して、必要となる場合があります。

今後の感染動向に注意、イタリアでもデルタ株で感染拡大の可能性あり

 以上のように、まだイタリア国内でも感染が心配な状況ではありますが、COVID-19グリーン証明書の発行を日本で受けることができれば、イタリアを旅行できるように、今のところは、法的にはなっています。ただし、イタリア入国前14日以内に英国に滞在したりトランジットしたりすると、PCR検査または抗原検査を受けて、5日間の隔離、そして、隔離期間の終わりに再度PCR検査または抗原検査を受ける必要がありますし、ブラジルやインドなどのように、滞在・トランジットをした場合には、イタリアに入国できなくなる国もあります。

 また、英国やイスラエルなど、ワクチン接種が進んですでに感染が抑えられたかに見えた国で、デルタ株による感染が拡大し、イタリアでもデルタ株の感染が起こってきているために、イタリア政府はイタリア市民に対して、ワクチン接種を完了してから旅行に出るよう勧めています。

 旅行中に、新型コロナウイルスに感染してしまう可能性もあり、その場合には、グリーンパスも無効になってしまいますので、今しばらくは、特に差し迫った理由がある場合でなければ、イタリア旅行を計画する前に、感染の動向を見守った方がいいのではないかと思います。関連の法や規制については、今後も感染の傾向によって、変わる恐れがありますので、旅行を計画される際には、その時点での法がどうなっているかをご確認ください。

【参照ウェブページ】

ITALIA Azienda Nazionale Turismo - Aggiornamenti COVID-19: informazioni utili per i turisti

外務省 海外安全ホームページ - イタリア、現地大使館・総領事館からの安全情報

トラベルボイス - 日本のワクチン接種証明書、発行手続きの概要が明らかに、紙による申請と交付を7月中旬に開始、デジタル証明との連携も検討

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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