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カナダからの呟き

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実はかなり恐ろしいイベントであるクリスマス - 消えたパーティーに胸を撫でおろす人たち

トロント市庁舎前のクリスマスツリー(筆者撮影)

ロックダウン中のトロント

トロントは現在、ロックダウン中である。日本では何故だか『都市閉鎖』と報じられたらしく、日本の友人から心配するメッセージをもらった。外出禁止などはなく、どちらかといえば規制強化である。わざわざロックダウンという言葉を用いて規制強化したのは、ホリデーシーズンに向けたパーティーや集会の抑制のためではないかと思われる。

トロントのロックダウンの概要は:

  • ● 同居家族以外との屋内での集まりは不可
  • ● 一人暮らしの人は、他の1世帯に限り接触が可能
  • ● 屋外での集まりは10人まで
  • ● 飲食店はテイクアウト、ドライブスルー、デリバリーのみ
  • ● 宗教的な礼拝、葬儀、結婚式は、屋内で10人、屋外で10人まで
  • ● スポーツジムは閉鎖
  • ● 生活に必要不可欠でない小売店やショッピングモールは、カービングサイドでの集荷または配達のみ
  • ● パーソナルケアサービス(理容室、美容室、ネイルケアなど)、カジノ、ビンゴホールは閉鎖
  • ● 専門学校、大学、大学院などの教育機関は、臨床研修などの一部の例外を除き、バーチャル教育に移行
  • ● 薬局、医者や歯科医院、食料品店などの必要不可欠なサービスは引き続き開業、但し入店人数は収容可能人数の半分まで
  • ● 学校(小学校、中学校、高校)は継続(オンライン授業の選択肢あり)

違反者には750ドルの罰金が課せらる。

制限はあるものの、日本でいうところのロックダウンや都市封鎖のイメージとはかなり違うのではないだろうか?スーパーでは普通に買い物できるし、目立った混乱もない。トイレットペーパーも品薄どころかセールだったり。ロックダウン中でも殺伐とした空気は殆どなく、何故だか牧歌的な雰囲気さえ漂っている。

しかし、この規制強化はホリデーシーズンに大きな影を落としている。クリスマスパーティーは同居家族のみ(一人暮らしの場合は家族に合流できる)。さらにレストランでの食事はできない。ファミリーイベント的にもビジネス的にもダメージなのである。

カナダ人のクリスマスへの入れ込み度

カナダに移住して驚いたことはクリスマスへの入れ込み度である。9月には既にハロウインと並行してにクリスマスデコレーションが店頭に並ぶ。プレゼントのリサーチも始まる。クリスマスショッピングも狂気の沙汰である。大量のプレゼントを買い込み、全てにラッピングする。ラッピングは有料でやってもらえるが日本のように綺麗ではないので自分でする人たちが多い。かなりの大作業である。

クリスマスツリーやオーナメントにもこだわりがあり、観光地にはクリスマスオーナメントのみを売るお店も存在する。最初に見た時は「そんな季節限定もので通年営業は可能なのだろうか?」と思っていたが、クリスマスオーナメントを旅行先ですら買う人々が一定数存在するらしい。実際に代々続くクリスマスオーナメントが存在し、それを買い足して行く、一種の相続資産のようになっている。

クリスマスツリーもツリーファームまで選びに行く人たちも多い。モミの木の匂いは素敵ではあるのだが、葉がボロボロ落ちるので掃除がかなり大変である。ツリーを買って運んで、家に持ち込み、飾りを飾るだけで結構な作業量である。ポインセチアもクリスマスに人気で買い込む人が多い。但し猫や犬には毒なので気をつける必要がある。

『欧米のクリスマスは日本のお正月のようなもの』とよく言われるが、おそらく欧米のクリスマスの方が日本のお正月より物質主義だ。そしてクリスマスにかける熱量の方が圧倒的に高いように思う。クリスマスのためのデコレーション、クリスマスに向けたカウントダウン、クリスマスに向けたカードとプレゼント、クリスマスに向けたメニューの確立、クリスマスに向けた予定とスケジュール、と言った具合に11〜12月はクリスマスがあらゆることに影響を及ぼすのだ。12月ともなればまさにクリスマス中心の生活になると言っても過言ではない。

12月はパーティーシーズン

カナダでは12月に入るとホリデーシーズンであり、これはパーティーシーズンでもある。12月25日は家族で過ごすものとされるため、12月に入るやいなや、何かしらかのパーティーが毎週末開催されるような感覚である。友人だったり、サークルだったり、仕事関係であったり、集う人も規模も様々だが、とにもかくにもパーティーが多い。企業が社員を労う為のパーティーは、通常、社員のパートナーも参加できるようになっている。基本的にカナダのパーティーはカップル文化である。つまりカップル(恋人や配偶者など)でパーティーに参加することになるので、パートナーの会社のパーティーなど、殆ど面識がない人ばかりのパーティーに参加しなければいけないことも多々ある。

パーティー参加は強制ではないが、社交性が問われる場なのでむやみやたらにも断れない。パーティーによってはなかなか悩ましいのである。

こういったパーティーも今年はコロナ禍で全てなくなった。パーティーどころか、人が集うこと自体に制限があるのである。

クリスマスは実はかなり恐ろしいイベント

家族構成やバックグラウンドにもよるが、クリスマスは家族と親戚が集うイベントであり、プレゼントを人数分用意しなければならない。つまり人数が多いと渡すプレゼントも多い。また部下や同僚、友人、知人などにもプレゼントを渡す機会でもある。当然、出費も買い物時間も嵩む。家族であるなら好みもわかるかもしれないが、年に数回しか会わない親戚の好みなどわからない。つまり、あげるモノも、もらうモノも、高い確率で欲しくないものが多い。かなり苦行なイベントである。そして子ども達はクリスマスに山のようにプレゼントを受け取るので、プレゼント一つ一つに感謝したりしない。興味のないプレゼントは投げ捨てたりするのだ。それなのにお金をかけなけれなばらない理不尽さ。また、自分たちの子ども達が独立した途端、もっともらしい理由をつけて、クリスマスプレゼント交換の停止を申し入れる家族もいたりするそうである。もらえるものはもらうが与える立場になると与えたくないという訳である。欧米ではしがらみのようなものは希薄なのかと思っていたが、そういう訳でもなく。あるところには、がっつり存在するのである。

またもらったプレゼントはその場で開けるのが基本なのである。例えそれほど嬉しくないプレゼントでも笑顔を作る。プレゼントを贈った相手が明らかに不満顔をしていても平常心でいる。そしてプレゼントのグレードがわかってしまうので、自分の立ち位置・評価を知る場所でもある。もらったもので他者からの評価を測るのは愚かなことではあるが、目の前にプレゼントという形で視覚化されるのである。何たる苦行。

欲しくないものを避けるために、前もって希望を訊いたり、ギフトレシート(金額は記載されていないがお店に行けば返品や交換できる)が同封される。オンタリオ州ではクリスマスの翌日はボクシングデーというセール日になるので、返品してその分でセール品を買おうとする人も多い。一方で、返品や返金ができない場合、もらったプレゼントを取っておき、翌年に別の人にプレゼントとして渡すという手法も存在する。まさかの1年越しである。

聖なる日のはずが、マテリアリステイックの権化のようなイベントになっており、同時に欲望と人の業が露呈するイベントでもあるのだ。

家族イベントであるが故のプレッシャーもある。知人女性(イギリス系カナダ人)はクリスマスパーティーホストとして、毎年、大人数向けのターキーを数時間かけて焼くのだそうだが、「うまくいくかどうか不安で前日はよく眠れない」とこぼしていた。「そこまで精神的負担がかかるのであればやめてしまえば?」と言ったら、「慣習なのではずせない」、と。義理と責務が交差する恐ろしいイベントでもあるのだ。またクリスマスパーティーには持ち寄りで料理を持って行くことが多いのだが、この負担具合が結構な悩みどころで、簡単すぎても豪華すぎてもダメなのである。簡単すぎると手抜きと思われ、豪華すぎるとホストの面子を潰すからだそうな。自分の家族とのクリスマスパーティーならまだしも、パートナーの家族とのパティーだと『査定の場』となりがちで、精神的負担もかかる。

全ての家族がそうという訳ではないが、クリスマスは肉体的にも精神的にも金銭的にも負担が高いイベントと言える。

クリスマス、実は恐ろしいイベントなのである。

消えたパーティーに胸を撫でおろす人たち

現在のロックダウンは、おそらくクリスマス中も続くであろう。家族や親戚に会えない悲しみがある一方、パートナーの家族宅に行かなければならない・パートナーの家族を招かなければならない人たちには、コロナ禍の『同居家族以外とは集まらない』の規制は、実は朗報なのではないかと推測する。

とはいえパーティーがなくてもプレゼントは用意しなくてはいけないかもしれないし、同居家族以外との集まりは禁止されているにも関わらず、ゴリ押しでパーティーをしようとする人たちもいるかもしれない。そういった輩を説得するのに労力が必要なのは辛い。ロックダウン下では罰金が課せられるのであるが、これはパーティーに押しかけ参加した者だけでなく、パーティー主催者も巻き添えを喰うのである。実際にどこまで罰金が徴収できるのかは疑問ではあるが。

同居家族のみのパーティーなら、食事を無理して豪華にする必要はないし、食べたいものを作ればいいし、たまにしか会わない人たちに気を使う必要もない。むしろ、利点の方が高く、胸を撫で下ろしている人も多いのではないだろうか。

最後の最後まで希望を捨てない人たち

トロントのロックダウンは2020年11月23日から最短で28日間有効。なので理屈的にはクリスマス前に制限が解けるということもある。現在の状況をみていると、それは不可能に近いのだが、この微妙な日数設定が、プレゼントやパーティーのキャンセルをガッツリできない理由にもなっている。最後まで頑なに粘る人たちもいるのだ。

なにせクリスマスは1年における最大の家族イベントなので、『政府もある程度の融通案を出してしてくれるのではないか?』と考える人もいるらしい。

クリスマス文化に育ってない身としては『最大のイベントを回避してこその感染対策!』と思ってしまうのだが。

[2020年12月21日追記:コロナ感染者数の増加により、12月26日からオンタリオ州全体がロックダウンされることが決定した。25日からにしなかったのは州政府の温情と言える]

パーティーの暗黙の了解はパーティーによって様々

あなたが、もし、欧米でパーティーに招待されたら、どんな集まりなのか、誰が来るのか、何を持っていけばいいか、何を着ていけばいいのか、何時に行けばいいのか、必ず確認した方がいい。例え「手ぶらできてよい」と言われても、ワイン(招待者がお酒が飲める場合)とちょっとしたプレゼントは用意しておいた方がいい。多民族・多文化都市では12月にパーティーに招待されてもクリスマスパーティーとは限らない。なので言動や行動に気をつける必要がある。

パーティーの暗黙の了解は、パーティーによって違うのだ。うっかり言葉通りに受け取ってはいけない。セーフティネットは常に自分で用意しておかなければならないのである。

コロナ禍で開催されないクリスマスマーケットとホリデーフェア

トロントでは毎年クリスマス前にクリスマスマーケットとホリデーフェアが開催される。クリスマスマーケットは映画の撮影などにもよく使われるディスティラリーエリアと呼ばれる観光地で、ホリデーフェアは市庁舎の前で行われる。クリスマスマーケットはヨーロッパのクリスマスマーケットっぽい雰囲気でお洒落感も漂う。ホリデーマーケットはファミリー向けで、移動遊園地のアトラクションやテントのお店が並ぶ。サンタとの撮影会もある。クリスマスというよりは割と何でもアリな感じである。

こういったクリスマス関連のイベントやマーケットはコロナ禍の影響でキャンセルされてしまった。

好んで行くイベントでもなかったのだが、クリスマスや年末に向けて街が浮かれる様子を見るのは楽しかった。しかし、今年はそれが希薄である。一方で市庁舎のクリスマスツリーは今年も設置され、点灯されていた。キャンセルされたイベントが多くある一方で、リスクを増やさない範囲でできるだけクリスマス感を出そうとする街の意気込みを感じる。

クリスマスが複数回あるトロント

トロントは多民族都市なのでクリスマスが複数回ある。しかしながら、カナダで祝日とされているのは12月25日のみである。

● 12月25日 クリスマスの日
● 1月6日 アルメニアのクリスマス
● 1月7日 オーソドックスのクリスマス
● 1月7日 コプトのクリスマス

メリークリスマスではなくハッピーホリデー

カナダは多民族国家なのでクリスマスでも「Merry Christmas!」とは言わずに「Happy Holidays!」と言うのが一般的である。こういう気遣いがいかにもカナダなのだが、これに関してユダヤ教やイスラム教の人たちが「そこまで気を遣わなくても!ホリデーシーズンなんだから!」と敢えて「メリークリスマス」と使ってみたり、混沌としている。

個人的には「Happy Holidays!」を使うが、Holidayの語源もholy day(聖なる日)だから、宗教色から逃れられてないような気もする。しかし、市庁舎前のクリスマスツリーの前で人種や宗教やバックグラウンドの違う人たちが、笑顔で写真を撮っているのをみると、この街の多文化性と寛容さを改めて嬉しく思うのだ。

クリスマスは店が閉まる

クリスマスは制定祝日なので店が閉鎖する。日本だとクリスマスは稼ぎ時のイメージがあるが、オンタリオ州では次の条件を満たした店舗のみが営業できる:

  1. 1. 販売または展示の小売業の面積が2,400平方フィート未満
  2. 2. 店員が3人未満
  3. 3. 売るものが次の場合はOK。 a) 食料品、b) たばこまたはたばこの使用に必要な物品、c) 骨董品、d) 手工芸品、e) 新鮮な果物と野菜、またはf) 書籍、雑誌、新聞

または、市の認定した観光エリアにお店がある場合は営業が可能だ。

日本人的には儲け時に店を閉める行為は勿体ない気もしてしまうのであるが、『制定祝日に営業することで従業員が家族と一緒に過ごせない不利益を被る』という考え方に基づいているらしい。一方で小売業側からは緩和希望や観光エリアの拡大の声も上がっている。

店が閉まってしまうことを忘れてクリスマスにひもじい思いをしたことが何回かある。日本のようにクリスマスは街が人混みで賑わうことはなくひっそりしている。まさにサイレントナイトである。観光で12月25日に盛り上がりを期待すると肩透かしを喰らうことになるかもしれない。何故ならクリスマスイベントは殆どの場合、23日までなのだ。

市の認定した観光エリアはレストランも営業している。なのでクリスマスは家族イベントである一方で、無宗教・他宗教の人が中華レストランや韓国レストランで集っていたりするのだ。

今年はコロナ禍でパーテイーや集合することができないし、レストランで食事もできないので(テイクアウトやデリバリーは可能)、『ぼっちクリスマス』を迎える人が多そうである。

コロナ禍で代替手段やアイデアを考えるカナダ

カナダは老若男女問わず、PCやスマホ操作をこなす人が多いので、今年のクリスマスパーティーはヴァーチャルなものにする家族も多いのではないかと推測される。プロジェクターで実物大に映し出すとかやりそうである。

または車で親戚宅に乗り付け、屋外でプレゼントをホッケースティックで渡すとか、何かしらかの代替手段を作り出すのではないだろうか?

カナダは困難に直面しても、「楽しみを奪われた」と悲しむだけで終わらない人たちが多い。代替案を出したり、別の楽しみ方を考え出してくるのだ。とあるクリスマスツリー業者は駐車場にドライブスルーで楽しめる電飾の道を1.5km作った。とあるコミュニティではデコレーションに地域色を出そうと、発起人家族たちの呼びかけでご近所一帯がラマのバルーンが飾り『ラマ通り』を作り出した(参照記事:A neighbourhood in Toronto is now filled with inflatable holiday llamas)。こういう時に自分も他者も楽しめる方法を模索して提案する人たちが多いのだ。

「いつものクリスマスイベントがない」と嘆くこともできれば、「いつもとは違う何かをするチャンス」と捉えることもできるのである。そういう意味でカナダは前向きな人たちが多いように思うのであった。

 

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カナダに棲む女。食事においての最後の一品は自分が食べたい。寒がりなのにカナダに移住。英語が苦手なのにカナダに移住。フランス語が喋れないのにカナダに移住。

著書、『毒の滴』が販売中です。

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Twitter: @poisondrop333

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