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カナダからの呟き

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カナダで殆ど報道されず話題にも上らない東京オリンピック・パラリンピック

iStock - Joel Papalini

カナダでは東京オリンピック・パラリンピックに対する報道はとても少ない。
オリンピック関連のニュースが10あるとすれば、7割は北京オリンピックについて、2割はアスリートについて、 1割が東京オリンピックについてという具合だ。
そもそもオリンピック関連のニュースが少ない。
北京オリンピックが話題に上るのは、オリンピックそのものではなく、カナダ議会が中国政府によるウイグル族への弾圧を「ジェノサイド(虐殺)」だと非難する決議を採択しており、北京オリンピック開催地の変更の要求、またはボイコットの検討をしているからだ。
例の森氏の女性蔑視発言の時は頻繁に多岐に渡って報道されていたが、それを除くと、東京オリンピック・パラリンピックはカナダでは殆どニュースにならないし話題にも上らない。

東京オリンピック・パラリンピックが報道されない理由は明確である。
全てがuncertain(不確実)であるからである。
報道できる確実なものがないので、報道できないのだ。
さらに報道してしまい、余計な責任を負いたくないという側面もあると思う。
なにせ日本政府もIOCも「開催する」と言っておきながら具体案を提示していない。オリンピックが開催されるか否かもわからず、開催か否かを決定づける新規感染者数などの確固たるベンチマークもない。なので「報道しない」というよりは、「不確かなことばかりで報道する価値がない」のだ。

2月に日本でコロナワクチンのワクチンが開始された時には「日本がコロナワクチンを開始しました。G7では最後の国です。」と報道されていた。『オリンピック開催国なのに最後かよ!』というニュアンスである。開催国でありながら行動の遅い日本にいらついている感じはあるものの、開催するリスクもしないリスクも、所詮、『他国事』である。よって、カナダは東京オリンピック・パラリンピックの決定には傍観するつもりでいることが見受けられる。

2020年に「このまま東京オリンピックが2020年に開催されるのであれば参加しない」と最初に正式に表明した国はカナダだった。2020年の3月は新型コロナウイルスの感染対策も対応も見通しが立っていなかった。「アスリートや社会を危険に晒す行動を促す訳にはいかない」という見解であった。カナダに続き、他国も「2020年の夏に開催の場合は不参加」の意を表明し、結果としてオリンピックは2021年に延長された。米国が言い出したら、中国やロシアの反感を買ったであろうし、逆もまたさらなり、である。よって、最初に不参加表明をした国がカナダであったことで他国が追随しやすい道が作られ、日本政府やIOCが延期を発表しやすい環境が作られた訳である。

しかしながら、今回、カナダはこういった表明をしないであろう。1年経ってコロナが沈静化したかというとそうではない。変異種が出てリスク的には1年前とほぼ同じ。 ただ人々の感染予防行動は習慣づけられたので、そこは2020年とは違うところである。 各国が対策方法を持っているし、アスリートにワクチンを優先させるという方法もある(カナダのIOCメンバーがこれを言って大非難を浴びたが、方法としては存在する。但しIOCも日本政府もオリンピックに際してアスリートのコロナワクチン接種は要求してない)。
「安全なオリンピックを」と言いつつも何一つ具体策を明示しない日本政府とIOCに対して、カナダは既に何も期待していないように見える。

https://www.olympic.org/tokyo-2020-playbooksでPlaybookが公開されたが、これも曖昧さを如実に表したものとなっている。
●渡航前や到着時に強制的な隔離期間がない。その代わり、渡航前の2週間は毎日健康状態を「モニター」し、その結果(体温を含む)をアプリで報告し、フライトから72時間以内にコロナ検査で陰性であることを証明するように求められている。しかしこのアプリは現時点で存在していないのではなかろうか?現時点でベータ版すらないアプリを使うことが前提となっているのであれば恐怖である。
●到着してからどのくらいの頻度で検査を受けるのかは不明
"you will be tested for COVID-19 regularly during the Games depending on the nature of your role.(役割に応じて、ゲーム中に定期的にコロナ検査を受ける)"とあり、どういった役割の人がどういう頻度で行うのか不明のままである。

個人的にはオリンピック・パラリンピック関連の訪問者(アスリート含む)が新型コロナウイルス陽性となった場合、受け入れ先のキャパが日本の医療機関に存在するとは思えないのであるが。また陽性の疑いがある人間を速やかに多言語で導けるシステムも人材も存在しないように思う。

既に3月なのにこの状態である。確かなものが何もない。

カナダでアスリートや報道陣が東京オリンピックを表現する時に、決まって口にするのがuncertain、uncertainty(不確実)である。"There's so much uncertainty(不確かなことがとてもたくさんある)"といった具合。この不確かさによりアスリートに肉体的にも精神的にも多大な苦痛と困難を与えているのが東京オリンピック・パラリンピックなのである。
結局のところ、『1年延長されても不確かなことばかりの東京オリンピックに触れたくないし、首を突っ込みたくない』というのが他国の本音なのではなかろうか?
こういった事情から、カナダでは殆ど報道されないし、話題にも上らないのが東京オリンピック・パラリンピックなのである。

参照サイト
● Canada Campaign launched in Canada to move 2022 Winter Olympics from Beijing over human rights abuses
https://nationalpost.com/news/campaign-launched-in-canada-pushes-to-move-2022-winter-olympics-from-beijing-over-human-rights-abuses
● 2020 PLAYBOOKS
https://www.olympic.org/tokyo-2020-playbooks

注意
記事にあげたPlaybookの内容は2021年3月1日の時点のものなので、今後、内容が更新され記事と異なる可能性があります。

 

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著者プロフィール
m

カナダに棲む女。食事においての最後の一品は自分が食べたい。寒がりなのにカナダに移住。英語が苦手なのにカナダに移住。フランス語が喋れないのにカナダに移住。

著書、『毒の滴』が販売中です。

ブログ:毒の滴(したたり)

Twitter: @poisondrop333

Instagram: drippingofpoison

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