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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

市場価格と経済的不安定なコーヒー農家

市場価格が高くなった日には農協前にコーヒーの行列ができます(筆者撮影)

コーヒーの価格はNYの証券取引所で決まることを以前ブログでお話したことがありますが、この毎日変動する価格によってコロンビアの54万世帯のコーヒー農家の収入が左右されています。

例えば私がコーヒー農家になった2018年は、コーヒー125kgあたりの値段は72万ペソか、高くても80万ペソあたりでした。コロンビアコーヒー生産者組合連合会の調べによると、 125kgのコーヒーを生産するのにかかるコストは約78万ペソだそうで、思い返せば作れば作るほど赤字の年でした。

更にこれより酷かった年は2014年。125kgのコーヒーの生産コストが78万ペソなのに対し、市場価格は40万ペソを割っていたそうです。この年に大勢のコーヒー農家がコーヒーから身を引き、木を切り倒したと言われています。

切り倒さずとも価格が上がるまで放っておけばいいじゃないかという意見も出そうですが、放っておいてもコーヒーは実をつけます。その実を収穫せずに放置すると実は腐って地面に落ちるわけですが、その実の中で大量のコーヒーベリーボーラー(CBB)と呼ばれる虫が繁殖し、次から次へとコーヒーを食べどんどん子孫を残します。CBBが食べたコーヒーには穴が空き、これらは売り物になりません。つまり、価格が上がってから栽培を再開したところで、CBBに侵された農園のコーヒーは虫食いだらけになって利益が上がらないのです。

 

話が少し逸れてしまいましたが、こうやって生産国とは遠く離れたニューヨークで決められた価格によって、多くの農家が経済的に不安定な状況に置かれてしまっています。

昔はこの価格の上下は基本的には需要と供給がファクターとなっていました。需要が増えると価格が上がり、価格が上がるとコーヒー栽培を始める人が増えるので価格が下がる、という一定のリズムで市場価格は上下していたのです。しかし、近年では投資家の影響をかなり受けており、価格の上下が全く予測することができません。コーヒー栽培で生計を立てていくのはいわばギャンブルみたいになってしまっているのが現状です。

 

さて、そんな感じで不定期に上下している市場価格ですが、2020年は価格が高騰しコーヒー農家にとってとても嬉しい年となりました。(その件についてのブログはこちら

今年に入って『125kg100万ペソ』の大台をキープしながらも緩やかに低下してきた市場価格ですが、2月25日に再び価格が急上昇。122万5千ペソという昨年の3月以来の高値となったのです。

価格が高騰しているから今コーヒー農家は儲かっているんだと思われるかもしれませんが、正直そこまででもありません。更に過去の価格低迷で借金を抱えている農家も多いでしょうから、そういった農家はせっかく出た利益も借金返済に当てざるを得ないことでしょう。理想的なのは「今より高い価格が安定してずっと続く」ことですが、そんな簡単にはいかないのが現実。私たちもこの価格高騰に甘んずることなく、将来の市場価格暴落に備えてコーヒー栽培以外の別の収入源を確保しなければいけません・・・。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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