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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

コロンビア料理で初!ミシュラン一つ星獲得

©︎YouTube - El Cielo: Restaurante colombiano recibe estrella Michelin y es uno de los mejores del mundo

4月22日、ミシュランガイドが2021年のワシントンDCでのセクションを発表したのですが、その結果がコロンビアでの大ニュースとなりました。

なぜアメリカのワシントンDCの結果が、遠く離れた南米コロンビアで話題になったのでしょうか?

今回はその理由について書いてみたいと思います。

 

コロンビア料理で初のミシュラン星獲得!

フアン・マヌエル・バリエントス シェフが経営するコロンビア料理レストラン『エルシエロ(el cielo)』がコロンビア料理で史上初のミシュラン一ツ星を獲得しました。

バリエントスシェフはコロンビアのメデジン出身。el cielo ホスピタリーグループを14年前に設立し、複数のレストランやホテルを所有しています。el cieloレストランはコロンビアに2店舗(ボゴタ・メデジン)、アメリカに2店舗(マイアミ・ワシントン)を構え、今回星を獲得したワシントンのレストランは2020年10月パンデミック真っ只中にオープンした新店舗です。

オープン当初から入店人数を制限しなければいけなかったり、従業員にウイルス感染者が見つかり1ヶ月休業しなければいけなかったりと、実際に営業していた期間は3ヶ月足らず。そんな困難続きの中での星獲得となりました。コロンビア人は彼の偉業に歓喜し、SNSにはたくさんの祝福の声が寄せられました。

バリエントスシェフは「私と私のチームはこの出来事をとても光栄に思っており、ミシュランガイドに登載される初めてのコロンビア料理レストランという事を謙虚に受け止めています。これはコロンビア料理にとって大きな成果となります。私の祖国の美食が世界に認められた事をとても誇りに思っており、これが国境を超えて我々の美食が世界に大きなインパクトを与える始まりにすぎないという事を願っています。」とコメントしています。

 

五感を刺激する体験ができるel cielo

今回星を獲得したel cielo DCは2つのホールに分かれています。メインホールには50席用意されおり、キャッサバ芋のニョッキやスイカとマグロのタタキなど、9〜68米ドルでコロンビアのモダン料理を楽しむ事ができます。

メインホール裏キッチンのすぐ側にあるわずか18席のエレガントな客席は、コースメニューを楽しむ為だけの客室となっています。コースはEl Viaje(旅/15品)、La experiencia(体験/22品)の2種類となっており、最先端のクリエイティブな技術を用い、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の5感すべてを刺激しながらコロンビアの先祖代々伝わった料理がベースとなったモダン料理を楽しむことができます。

このコースの目玉はチョコレートセラピー。人肌に温められたチョコレートを手のひらに垂らし手全体に広げつつも子供のように指についたチョコレートを舐めるんだとか。その後コーヒーと砂糖でスクラブマッサージをし洗い流します。チョコレート、コーヒー、砂糖と全てコロンビアが誇る農産物です。

 

平和を願うシェフ フアン・マルエル・バリエントス

el cieloのオーナーでありシェフでもあるバリエントスシェフは若干38歳。一人娘を溺愛するお父さんでもあります。

高校卒業後はメデジンの私立大学で機械工学を学ぶも3日で退学。その後生産管理工学を専攻するもしっくりこなかったバリエントスシェフはすぐに退学してしまいます。

そこで選んだのは料理への道。元々料理が趣味だったバリエントスシェフは19歳で自分の好きなことをする事を決めました。

その後、日系アルゼンチン人であるコミヤマ イワオシェフや、スペインのフアン・マリア・アルサックシェフの元で修行を積み、2007年に地元コロンビア メデジンにてel cieloをスタートさせました。

el cieloの第一号店に選んだ場所はメデジンの一等地ポブラド。しかしキッチンを作る前に資金が尽きてしまいます。そこでバリエントスシェフはホットドッグを売っていたトレーラーを中古で購入。タイヤを外し店内に押し込み、はじめの数ヶ月は気温50度近くまで上がるコンテナの中で汗だくで調理をしていたんだそうです。

el cieloでの斬新な体験はその後口コミですぐに広がり、その後ラテンアメリカのベストレストラン50選に選ばれるほどに。2014年にはコロンビアから飛び出しマイアミに新店舗をオープンするほどに成長しました。

実はバリエントスシェフには「平和活動家」の肩書もあります。

バリエントスシェフが生まれた80年代のメデジンは、麻薬組織と政府が激しく対立している時代でした。多くの無実な市民が殺害され、バリエントスシェフ自身も幼少期に父親が殺害予告を受けた事からイギリスに避難した過去もあるそうです。

麻薬組織との激しい対立も90年代には収束し、2016年に半世紀続いた内戦が平和条約締結という形で幕を下ろしましたが、これらの暴力的な歴史は多くの怪我人や元戦士などの社会的弱者を残しました。

バリエントスシェフは起業と同時にこれらの社会的弱者のための「El cielo基金」を設立。料理を通して彼らの社会復帰をサポートするとともに、被害者と元戦士を一緒に働かせることによってお互いを「許すこと」を教えています。

ミシュランガイドの世界はとてもシビアで、星の獲得はとても名誉なことである一方で、責任やプレッシャーが伴い星を落とす恐怖で自殺者が出てしまう事も。

コロンビアのラジオ「10AM Hoy por hoy」で、そのプレッシャーと恐怖について問われたバリエントスシェフですが、成功者らしい力強いコメントを残してラジオパーソナリティを圧倒させました。

「自分は16歳の時から事故にあったりパラシュートから落ちたり14回くらい死にかけました。不治の病を患ったりしたらそりゃ怖いでしょうけど、失敗したり星を落とすことには恐怖は感じません。人生は1日1日精一杯生きないといけませんから。もし神様が健康と家族さえ与えてくれたのなら前に進むのみです。そこに恐怖や不可能はありません。」

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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