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その日、或る移民が思うアメリカ

中島恒久|アメリカ

何故、筆者がアメリカに移民する事になったのか

コロラド州のRocky Mountain National Parkにて筆者撮影

はじめまして。このブログのタイトルは「その日、或る移民が思うアメリカ」です。25歳の時に日本からアメリカに渡り日系移民一世になった筆者ナカジマツネヒサの視点で、アメリカについて硬軟取り混ぜて書いていきます。

自己紹介もかねて今回は「何故、筆者がアメリカに移民する事になったのか」についてお話しします。

アメリカは言わずと知れた「移民の国」です。でも、それが具体的にどういう事かわかりますか?また、皆さんは自分が移民になる可能性があると思いますか?21世紀の現在、日本人が留学、駐在、就職、結婚などでは無く移民という立場でアメリカに渡るのは非常にレアですし、実際あまりイメージが沸かないだろうな、と思います。

ご存知の方も多いと思いますが、アメリカは出国時に出国手続きが無く、去る者は追わないサッパリした国です。その代わり不法入国や不法就労には非常に厳しくて入国管理はいつも緊張感が漂っています。読者の方の中にもアメリカの空港で別室送りになった事がある方がいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな風に入国には異常な厳しさを発揮しながらも、その傍らでは毎年世界中の50,000人に対して抽選で永住権(グリーンカード)をバラまいているアメリカ。アメリカの永住権は世界中に欲しがる人がいますし、普通に取得するには取得要件が非常に厳しい事で有名です。それなのに何故ほぼ審査無しで宝くじの様に永住権を出しているのでしょう?

その理由は「移民の出身国のバランスを整え多様性を維持する事」にあります。前述のように普通の手続きでは取得要件が厳しく、一部の優秀な人や裕福な人しか現実的にはアメリカの永住権取得できません。その結果、恵まれている先進国からの移民の割合が高くなってしまうので、それ以外の地域を中心に無作為の抽選で永住権をバラまいて移民の出身国のバランスを是正する訳です。発想が大胆ですよね。

この抽選永住権は正式にはDiversity Visa Program(移民多様化ビザ抽選プログラム)と呼ばれています。応募要件はたった2つ。①対象国で出生している事、②高校を卒業している事(高校を卒業していなくても数年の就業経験があればOK)で、とにかくハードルが低いのが特徴です。(応募要件については必ず米国国務省のウェブサイトを参照してください)抽選に当選しても過去に犯罪歴がある人には流石に永住権は出ません。しかし、それ以外ではほぼ100%永住権は発行されます。アメリカからすれば、このプログラムを通してどんな人間が移住して来るかわからないリスクがあります。実際何度もプログラムの中止は議論されてきました。しかし、そのリスクを取ってでも「移民の国」であることを貫こうとする力が強く働くところにアメリカの自覚と覚悟を感じるんですよね。本当に面白い国だと思います。

そして、お察しの方もいらっしゃると思いますが、私もこのプログラムに当選して移民になりました。

2001年9月11日にニューヨークで起きた同時多発テロをニュースで見ていた時「このテロの影響で今年は誰もグリーンカードの抽選に応募しないんじゃないかなぁ?」と思って応募をしたのです。それから数か月が経った2002年4月、ケンタッキー州にあるビザセンターからのCongratulations!と書かれた手紙が届き、私は移民への第一歩を踏み出しました。応募してから当選するまで、そして当選してからもしばらくは「移民することの意味」を真剣に考えていませんでしたが、とにかくアメリカに移民するための手続きが始まったのでした。

2004年2月、25歳の時にアメリカに渡りました。サンフランシスコの対岸にあるバークレーという街に流れ着き、数年暮らす事になります。移民としての自覚が芽生えてきたのは5,6年ほど経ってからでした。それまでは、いつも母国の日本に片足を置いていた様な感覚があり「何かあれば日本に帰れば良いか」と思っていた気がします。でも、アメリカの地に足をつけて生きていくのだ、と自分の感覚が変わった日が確実にあり、その日からようやく自覚的に移民となったのだと思います。

ちなみにデジタル大辞泉(小学館)によると「移民」とは

[名](スル)個人あるいは集団が永住を望んで他の国に移り住むこと。また、その人々。現在では「移住」「移住者」の語を用いることが多い。「多くの日本人が新天地を求めて移民した」

との事です。なるほど、いつか日本に帰ろうと思っている状態では移民の自覚が無いのは当然ですね。

人間にとって移民というのは手段であって、目的はあくまで他国でより良い生活を送る事です。私の場合は日本で生活に困窮していた訳でも無く、国を離れなくてはいけない理由も無く、言ってしまえば移民する目的がありませんでした。グリーンカードに当選したから移民になってしまった。だから、その日までは移民する事、移民である事が目的になってしまっていて、移民して何を成すかと言う本当の意味での目的に意識が全く行っていなかったんですね。移民らしからぬというか、非常にレアなケースであろうなぁ、と我ながら思います。

そんな経緯で移民になった私ですが今年在米17年目になりました。今でも常に移民である自分を意識して暮らしています。この感覚は母国に住んでいたら味わうことが無かったものでしょう。このブログを通して移民が思う事を色々と発信していきます。今まであまり「移民」について考える機会が無かった読者の方に、少しでも考えるキッカケを提供出来れば幸いです。

 

Profile

著者プロフィール
中島恒久

海外経験ゼロからアメリカ永住権の抽選に応募して一発当選。2004年、25歳の時にアメリカ移住。ジャズベーシストとしての活動の傍ら、寿司屋の下働き、起業、スタートアップ企業、刃物研ぎなどの仕事を転々とした結果ホームレスになりかける。現在は日系IT企業の米国法人にてCOO。サンフランシスコ在住の日系アメリカ人の一世。

Twitter: @carlostsune

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