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アルゼンチンと、タンゴな人々

西原なつき|アルゼンチン

健康志向高まるブエノスアイレス。この街に増えたものから見えること

(Dietetica - 健康食品店 / 筆者撮影)

最近、ブエノスアイレスの街にとても増えたと感じるものがあります。
それは、ディエテティカ(Dietetica)と呼ばれる「健康食品店」。


私がこの街に住み始めた7年前は、日本でいうコンビニエンスストア的にブエノスアイレスに数多く点在する小売店としては、キオスク、そして中国系スーパーがメインでした。
それが最近、空き店舗物件に新しいお店が入る際、次は何が入るだろう?と思うと、また健康食品店!ということが多いのです。
コロナ禍の前から徐々に増えていましたが、この1年でさらに勢いを増しているようにも感じます。
自宅から半径500m圏内にいくつ健康食品店があるだろう?と数えてみたら、思いつくだけでも15軒以上はあるのです。


どんなものがあるかというと、様々の種類の穀物、ドライフルーツ、スパイスなどの量り売りを中心に、オーガニック食品やベジタリアン・ビーガンフリー、グルテンフリー食品、また自然派コスメ、美容雑貨などが取り扱われています。

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(Photo : Dieteticas - 筆者撮影 / 豆類やシリアルなどの量り売り。このお店では、プラスチックごみを減らす目的で、紙袋または空瓶に各自で好きなだけ詰めてレジで精算するシステムです。)

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(スパイス類も豊富。100gから、好きなだけ詰めて購入できます。 )

昨年の厳しい外出禁止令下で飲食店が利用できなくなり、初期の頃は何か食べたいならスーパーに食材を買いに行くしかない、自炊をするしか手段がない期間がありました。少しずつデリバリーのみでの営業が許されるようになってからも、今まで自炊をしてこなかった人たちが料理をするようになった、という話はよく聞きました。
いわゆる「コロナ太り」、パンデミック中の生活スタイルの変化による体重の増加問題も世界的ではありますが、ここでも有り余る時間で食生活や生活の仕方の見直しを図った人は多いと思います。この街の人々の健康志向は高まっているように感じます。

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(Shampoo Solido - こちらは食品ではないですが、最近流行っている固形シャンプー・コンディショナー。大抵のDieteticaで見かけるようになりました。私はまだ挑戦できていませんが、自分の為、環境の為にも今後シフトチェンジしたいと思っていることのひとつです。)



主食=小麦の国での食生活の変化

健康食品店に並ぶものを見ていても、様々な変化が見られます。

アルゼンチンは農作物がグングン育つ肥沃で広大な土地を擁し、小麦や大豆が輸出品の大部分を占めています。
この国の主食は小麦で、伝統的にはピザ、パスタ、サンドイッチ、そしてアルゼンチンの軽食の定番・エンパナーダと呼ばれる、色々な具入りのパイ包みなどがよく食べられています。
その中でもとりわけピザは国民的ファストフードと言えます。街のメインストリートに行けばピザ屋がずらりと軒を連ね、みんなそれぞれお気に入りのお店があります。
どこにでもあり、大人数で気軽に集まれるお店の選択肢というと、アルゼンチン人の誰もがまず第一に思い浮かぶのはピザ屋であることはおそらく間違いありません。友達との集まり、イベント後の打ち上げ、ライブハウスでのまかない(98%はピザ)、振り返ると一週間毎日ピザを食べていた・・・ということもしばしば。

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(たっぷりのチーズと分厚いパン生地がアルゼンチン式ピザの特徴です。Public Domain/Victor Manuel Giordano)

それから、アルゼンチンでは習慣的に、レストランで席につくとまず必ず小さなパンがテーブルに運ばれてきます。注文した物が出てくるまでの時間の腹ごなしで、これはピザ屋であっても出るところがあります。
そして朝ごはんにはメディアルナ(= 半分の月、の意)と呼ばれるクロワッサンやトーストがトラディショナル。
ちなみにですが食事のメインの付け合せはじゃがいも(フライドポテトまたはマッシュポテト)が定番で、お米は元々は食べる習慣がありません。


そんなわけで、何も気にせずにいると小麦づくしな食生活になりがちなのですが、現在グルテンフリーや精製された小麦粉をなるべく摂らないという考え方も少しずつ浸透しているように思います。
不調で病院に行ったらセリアック病や小麦アレルギーだということが発覚した、という人も周りにもちらほらいます。


どこの健康食品店にも小麦粉の代替となる沢山の種類の粉が売られており、その傾向が垣間見えます。
グルテンフリーの人の間でよく利用されるものとしては、米粉、とうもろこし粉、ひよこ豆粉、最近では蕎麦粉もどこでも見つかるようになりました。小麦全粒粉、オートミール粉はグルテンフリーではありませんがポピュラーです。
その他にも大豆粉、ライ麦、大麦粉、タピオカ粉、アーモンドパウダー、ココナッツパウダー、チアシード粉、フラックスシード粉など・・・。
これらはだいたいどこのお店にも置いてあるものです。

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(上2段が粉類。豆類、米類もここでは袋詰めになって売られています。)



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この中には、昔からのアルゼンチン料理に使われている一般的な物もあれば、最近新しくラインナップに加わり定番化した粉もあります。
一見どのように使ってよいかわからない物もありますが、これらを使ったヘルシーなお料理・お菓子のレシピが以前に比べて様々なメディアで沢山紹介されるようになったようにも感じます。
アルゼンチンのお料理系人気インフルエンサーたちも、健康志向に特化したコンセプトでなくても「毎週○曜日はとうもろこし粉の日」、「グルテンフリーシリーズ」などの企画が見られます。
またレシピ内の小麦粉も出来るだけ全粒粉が使われていたり、白砂糖がきび砂糖やステビアに置き換えられるようになったりなど、ヘルシー志向が「普通」なものになりつつあることもうかがえます。

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(アルゼンチンのお料理系Youtubeチャンネルの中で登録者数が一番多い「Paulina Cocina」も、Sin gluten(グルテンフリー)で検索すると沢山のビデオが出てきます。)

Profile

著者プロフィール
西原なつき

バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。

Webサイト:Mi bandoneon y yo

Instagram :@natsuki_nishihara

Twitter:@bandoneona

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