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中国航海士・笈川幸司

笈川幸司|中国

第14回 杭州市にある花鳥市場

いま、中国は、空前のペットブームではないだろうか。昨年、販売業者の怠慢で5000匹の小動物がダンボール詰めにされたまま死んでいたというニュースがあったが、ペットは相変わらず人気で、いつ、ショッピングセンター内のペットショップに行っても、かならず人だかりができている。

ペットを飼う目的は様々だが、ペットの種類は豊富だ。

どの国でもたいてい犬猫の人気が一番であるように、中国でも犬猫の人気は圧倒的だ。ひと昔前、偽物の血統証がつき、毛に色を塗られ、いかにも上品な犬猫に仕立て上げられ、商店に並べられていたが、そのような仕業やノウハウはすでに人民に浸透している。だから、簡単に騙されるものは少ない。にもかかわらず、人々は、ペットを欲しがっている。

今日は、杭州市内にある花鳥市場を紹介しながら、中国のペット事情を話して行きたい。

クワガタ・カブトムシ

小さな透明のプラスチックケースに、一匹ずつ入れられている。このお店で人気なのは、ヒラタクワガタだ。夜行性で、ひと晩中ガチガチと挟み合い、朝になると、どちらかが首をもがれ、悲惨な状態になることもあるのだが、その凶暴性が人気の理由だという。それに対し、日本で人気のオオクワガタは、サイズ的にヒラタクワガタに劣り、ほとんど土から出てこないため、クワガタ通になるほど人気がないという。ただ、嬉しいことに、クワガタの飼い方は、ほとんどが日本から得られたノウハウが活かされているという。ヒラタクワガタの金額は、7センチを超える巨大サイズが2000円ほど。同じサイズのオオクワガタなら4〜5000円はする。決して安くない買い物だ。ヒラタクワガタ飼育は二、三年楽しめるのに対し、カブトムシは1シーズンしか持たないので、圧倒的に人気なのはクワガタのほうだ。

このお店では、そのほか、珍しい種類のカマキリやナナフシを大量に購入することができる。ちなみに、タガメやタイコウチといった水中昆虫は売られていなかったが、ネットショッピングでいくらでも安く購入できる。わたしは日本でタガメを見たことがなく、小学時代に憧れたが、ここでは、焼き鳥のように三匹のタガメが串刺しにされ、食用として売られているくらい簡単に手に入る。

ハムスター・うさぎ

ある日、朝一番で花鳥市場へ出かけた。店主の皆さんは店周りの掃除をしていたが、やはりというか、悲しいというか、ぎゅうぎゅう詰めにされていたうさぎが、どのケースの中でも一匹か二匹は動かなくなっていた。すぐに処分する店主もいれば、後回しにされていたうさぎもいた。うさぎで人気なのはピーターラビット風の茶色のうさぎだ。毛に色を塗られているのかもしれないし、時代は変わったので、簡単に増やすことができるのかもしれないが、とにかく勢いよく売れていく。ハムスターも人気だ。可愛らしい容貌で、ひと懐っこいところもある。杭州市のある水族館では、水族館と関係のない「ハムスター釣り」がある。釣り竿の先にチーズが紐付けされていて、竿を下ろし、ハムスターが食いつくのを待つ。30秒から1分でハムスターが食いつき、それを引き上げる。「可哀想!」という声が聞こえてきそうだが、ここでは子供から人気を集めている。そして、可愛らしい容貌に反し、ハムスターは共食いをするのだ。店主の目が光っている日中にそれが起こることはないが、店が閉まっている夜にそれが始まる。朝一で市場に出かけたら、その光景が目に入る。最初はあまりにもショッキングで、自分の目を疑ったが、その数の多さに目も慣れ、ハムスターの習性を受け入れることとなった。それが理由か、店主はお客さんにかならずいう。「一匹一匹分けて飼ってください」と。

杭州市で人気なのが日本の柴犬を集めた犬カフェ、大型猫を集めた猫カフェのほか、豚カフェもある。ミニ豚は、ネットショッピングでも購入できる。豚の赤ちゃんが400元(日本円で7000円くらい)だ。「豚はなんでも食べるから、一人暮らしで、ご飯が余ってもったいないと感じる人にはおすすめ」だそうだ。

 

Profile

著者プロフィール
笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。中国滞在20年目。北京大学・清華大学両校で10年間教鞭をとった後、中国110都市396校で「日本語学習方法」をテーマに講演会を行う(日本語講演マラソン)。現在は浙江省杭州に住み、日本で就職を希望する世界中の大学生や日本語スキル向上を目指す日本語教師向けにオンライン授業を行っている。目指すは「桃李満天下」。

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