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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

フランスはヨーロッパ最大の麻薬消費国だった!フランスを蝕む麻薬・ドラッグとディーラーの武装化

フランスは、ヨーロッパ最大の大麻消費国という恐ろしい現実   pixabay画像

ここのところ、フランスは物騒なニュースばかりで、しょっちゅう、凶悪な殺人犯を血眼になって探している感があります。しかも、それは、ナイフを使って切りつけるばかりではなく、銃による犯罪も多くなっていることに、「フランスはいつから銃社会になってしまったのだろうか?」と不安を掻き立てられます。そして、銃による犯罪の多くには、麻薬・ドラッグの闇取引が絡んでいるようです。自ずと浮き彫りになってきたフランスでの麻薬・ドラッグ問題に、「フランスは、ヨーロッパで最大の麻薬消費国」という事実を知り、愕然としています。

アヴィニョンでの麻薬取引現場に駆けつけた警察官射殺事件

5月5日の夕刻、18時半頃、アヴィニョン(フランス南東部・ヴォクリューズ県)で、麻薬・ドラッグ取引ポイントであると警戒されていたエリアに群衆が集まったために、部門介入グループの警察官3名が急遽、取締りに配置されたところ、そのうちの警察官一人が銃で胸と腹部を撃たれ、救急隊が駆けつけましたが、その場で死亡するという事件が起こりました。麻薬・ドラッグ取引ポイントとはいえ、公道で、しかも警察官が銃殺されるという事件は、あまりにも衝撃的で、フランス中が大騒ぎになりました。犯人は、最近の殺人犯のトレンドとも思われるトロチネット(キックボード)で逃亡しましたが、3日後に、容疑者と共犯者を含む4人は、アヴィニョンから20㎞以上離れた高速道路の料金所で、車でスペインに逃げようとしていたところを逮捕されました。主犯の男は、成人とはいえ、まだ19歳の青年でした。犯人の男は、殺人現場に同行していた被害者の同僚警察官によって、本人確認がなされています。アヴィニョン警察署の前で行われた被害者の36歳の警官(まだ幼い2人の少女の父親)の追悼集会には、警察関係者・政府関係者だけでなく、全国から1万人近くの国民が訪れる大々的なものになりました。こんな時にコロナ禍とはいえ、これほど多くの国民が集まり、(こういう集まりに参加している人は皆、きちんとマスクを着用している)、怒りと悲しみを分かち合いながら、マルセイエーズ(フランス国歌)を歌う光景は、フランス国民のここぞという時の連帯と暖かい気持ちが垣間見えるところです。また、後日、改めて行われた追悼式典では、カステックス首相が議長を務め、内務大臣、法務大臣も参加し、「最悪の事態に直面した彼は、勇敢に職務に取り組み、彼は最善を尽くした」と彼の勇士を讃え、彼には、「レジオンドヌール勲章」が授けられました。

想像以上に広がっているフランスでの麻薬・ドラッグ

しかし、この警官殺害にまで至った麻薬・ドラッグ問題は、フランス国内の麻薬問題の氷山の一角でしかありません。現在、フランスでは、4,000近い麻薬売買拠点があるとされており、今年に入って、すでに2,000人近くの麻薬の密売人が逮捕されています。この殺人事件が起こったアヴィニョンでは、4月中旬に麻薬密売組織の一団が逮捕されたばかりで、その際にも、約37の武器とさまざまな口径の多数の弾薬が押収されていました。この拡大する麻薬密売拠点からは、同時に銃などの武器が発見されることが多く、麻薬・ドラッグディーラーの武装化が進んでいることを意味しています。麻薬・ドラッグに関わる捜査が、警察官にとって、一段と危険な仕事になっているのです。武装化してまで、彼らがこの密売を広げている大麻・ドラッグ市場は、ここ10年間で300%増加。大麻で12億ユーロ、コカインで8億ユーロ、その他の薬物も含めて年間30億ユーロをもたらしていると推定されています。もちろん、密売なので、税金を払うこともないこの巨大な市場の下には、140万人の大麻消費者と65万人のコカイン消費者がおり、年間、360万トンの大麻と20〜25トンのコカインがフランスに流入していることになります。ことに大麻に関しては、ごくごく普通に使用されているケースも少なくなく、よく日本で「芸能人が大麻で逮捕」などというニュースを目にしたりすると、「日本は、こんなことでこんなに大騒ぎになるんだ・・」などと、フランス人が言っているのを耳にして、ギョッとさせられたりもします。それでもフランスでは、薬物使用は、1年の懲役と3,750ユーロ(約50万円)の罰金が課せられることになっているのです。あまりに日常化して危機感がないのか、中毒性のために知りながらもやめられないのか、どちらにしても、この麻薬の流通が更なる犯罪に繋がり、間接的にも、国民を危険に晒していることは間違いはありません。

貧乏人の薬物「クラック」の拡大と麻薬・ドラッグの密売人と住民との衝突

このアヴィニョンでの事件の数日前にもパリ19区では、麻薬・ドラッグ密売人と住民との間で、数日間にわたっての衝突が起こり、暴動のような騒ぎになっていて、物々しく警察官が警戒のために練り歩く異常な事態が起こっていました。パリ19区のスターリングラード広場では、毎晩、広場を占拠する薬物使用者の群衆に住民が怒りだし、数日間にわたって、麻薬使用者に向けての花火で攻撃が行われていたのです。この地域は、以前から麻薬常習者やディーラーが多いことで有名ではありましたが、最近に至っては、薬物関係者の聖地のようになっているのです。毎日、100人以上が集まると言われているこの地域では、警察のパトロールを24時間体制にしたり、ベンチを取り払うなどの対策をとっているものの未解決のままなのです。それどころか、最近、パリを中心として急速に広まっている「クラック」というコカインの一種のドラッグの拡大が深刻で、比較的安価に手に入ることから、「貧乏人の薬」などの愛称がつけられて、急速に広まっているのです。

マクロン大統領の「麻薬売買取り締まり強化」宣言

立て続けに起こる麻薬・ドラッグに関わる事件の急増により、フランスは、麻薬取り締まりを強化することを発表しています。マクロン大統領は、任期が終わる2022年までに1万人の警察官の増員を計画、すでに6,000人が採用されており、今年中にさらに2,000人を採用する予定にしており、5年間で17億ユーロの予算が追加されています。また、度重なる警察官殺害の事件(この少し前に、ランブイエ(イル・ド・フランス イヴリーヌ県)警察署にテロリストが押し入り、警察官を殺害するという痛ましい事件が起こったばかり)に直面し、政府は国民を守る立場である危険な職務につく警察官への攻撃者に対しての罰則の強化(終身刑あるいは、懲役刑の30年延長)も発表しています。麻薬・ドラッグそのものの危険はもちろん、そこから派生する事件の多発、しかも銃が蔓延る社会に陥ることだけは、いかにしても食い止めようと努力しているフランスです。しかし、悲しいことに、麻薬・ドラッグの拠点を一つ一つ解体しても、決して拠点がなくなることはなく、単に拠点が移動しているに過ぎないことも事実なのです。19歳というまだまだ将来があるはずの若者が麻薬・ドラッグのために銃を携帯し、警察官を殺してしまうような犯罪を犯してしまう悲劇が起こることも、彼自身も加害者でありながら、同時に被害者であるとも思えるのです。パンデミックにより、失業者が溢れる中、最も雇用が増加しているのが警察官とは、甚だ悲しい現実です。

 

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著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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