イタリア事情斜め読み
イタリアにおけるコロナウイルスワクチン事情
| イタリアで最初のコロナウイルスワクチンは
「いつ到着し、いつ投与が開始され、誰に投与されるか?」
11月末の認可要請により、イタリアは来年春の終わりまでには、150万人にワクチン接種することを目標としているという。
しかし、まだそれには問題が山積みである。
製薬会社のファイザーは、うまくいけば、RNAに基づく抗コビッドワクチンの登録を11月の第3週にアメリカの代理店FDAに申請する予定だ。
これは、マネージングディレクターのアルベルト・ボゥラが、同社のWebサイトで発表した。
ファイザー製薬のCEOは、
「すべてのワクチンと同様に、登録を取得するのに成功しなければならない3つの重要な領域がある。
まず、ワクチンは効果的であることが証明されなければならない。つまり、ワクチン接種後に感染したほとんどの人がCOVID-19疾患を予防できること。第二に、重要なことはワクチンが安全であることが証明されなければならない。現在、何万人ものワクチン接種を受けた健康なボランティアからデータを得ている。
最後に、ワクチンが最高品質基準に従って工業的に生産できることを実証する必要がある。
と言った。
| 良い兆しのニュース
ミラノ州立大学の一般病理学・免疫学者のセルジョ・アブリニャーニ教授は、
通常は、ワクチンの開発には何年もかかるものです。しかし、彼らは、私たちが数ヶ月前まで考えられない方法と時間を短縮により、わずか9か月の研究開発の後、ワクチンの登録の可能性について話し合っています。このこと自体、信じられないことなのです。洗練された最先端生物医学技術を駆使してこの恐ろしいパンデミックに立ち向かう彼らの爆発的なエネルギーによってこのワクチンは開発されました。
とコメントしている。
また、国立分子遺伝学研究所「ロミオとエンリカ・インヴェルニッツィ」の所長は、
規制当局は文書を詳細を調査するのに数か月かかります。ただし、ワクチンの承認と登録には、従来バージョンのものと緊急バージョンのものの2種類があります。11月末に再びパンデミックが拡大した場合、非常に短い期間(緊急バージョンの数週間)で承認が得られる可能性があります。緊急使用の承認があれば、すぐにワクチンの登録は2021年1月までに行われる可能性があります。ヨーロッパと米国によってすでに支払いが行われており、生産は進行中であるため、ワクチンはおそらくすでに数億回の投与量で利用可能である見込みで、配布が開始される可能性があります。
と年末までに認可を得たいとの期待を示した。
| 2021年1月から2月までのワクチン配布は、誰に?何回、どの基準で?
世界保健機関(WHO)は、優先順位についての提案を含む文書を作成した。最初は、医師、看護師、医療従事者、法執行機関、および政府関係者でなければならないといい、同時に、Covid-19の場合、65歳以上で複数の罹患率があることがわかっている最も危険にさらされている人々がワクチンを確実に摂取することができるようにしなければならない。それは全ての国にワクチンが行き渡るよう、公平なワクチン共有を実現しようとしている。
イタリアでは、ロベルト・スペランザ保健相は、最初のトランシェで200万回の投与が行われる可能性があり、最初に医療従事者と高齢者に病気のワクチンを接種することを考えていると会見で語った。
保健大臣と記者の質疑応答
Q : 投与量は一人何回する必要がある?
A:予定では、一人が2回ずつの投与を受けます。第1段階で約100万人がワクチン接種を受けることになります。
Q : この最初のワクチン接種による免疫の防御に有効なレベルの持続期間は?
A:ワクチンを打って、免疫を獲得するには数か月かかります。免疫応答が「成熟」して最適になるまでには時間がかかります。2回目の投与は1回目投与から1か月後に行われ、少なくとも15日間待つ必要があるため、例えば、2月に最初のワクチン接種を開始した場合、3月末から防御に有効なレベルに達することでしょう。6月までに、特にインフルエンザワクチンを提供するロジスティクスに従う場合、この最初のトランシェが不足する可能性があります。国民の人口の大部分にワクチンを接種させるには、おそらく2022年になることでしょう。
Q : これは、虚弱な人々がまだ何ヶ月も身を守ることができないということでしょうか?冬を乗り切れますか?
A:この冬はまだ誰もワクチンによって防御や保護はされません。さらに、インフルエンザ、細菌性肺炎、免疫抑制された脆弱な人を殺す可能性のある傍インフルエンザ呼吸器感染症があるため、どのような場合でも身を守る必要があります。
という会見であった。
一方、イタリア国内生産で完全にイタリア製のcovidに対する治療薬も開発中である。 人間のモノクローナル抗体から来ているものだという。ローマのスパランザーニとシエナの病院の協力により、ウイルスから回収された人々の血液に関し、4か月の研究がこの重要な結果につながったと。
死亡率を減らすための適切な診断と治療方法の確立、マスクを着用し、蜜を避けてソーシャルディスタンスを守り飛沫に曝露しない、そして、手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒をする、個々の感染症対策に万全を期す意識と罹患しないように行動する事が大事であるような気がする。
| ワクチン治験中止でEU株下落、イタリア債長期債利回りが過去最低水準
10月12日に新型コロナウイルスのワクチン開発について、米製薬大手ジョンソン・エンド・ ジョンソン(J&J)が最終段階に入っていた臨床試験(治験)を一時中断したと発表された。1人の治験者に原因不明の疾患が発生したという。日本での治験は健康な成人で合計250人を対象に進めていたが、日本での治験も一時中断した。
10月14日、コロナ禍前の経済成長水準に戻れる唯一の切り札がワクチンであるという見込みと期待が高かった為か、ワクチン開発が失敗すればそのまま株価に影響が出た。イタリア10年債利回りは2bp下げて0.66%、過去最低を記録した。実質利回りがゼロ。
ワクチンが、コロナウイルスと戦う唯一の手段であり解決方法ではないが、治験中断でワクチン開発への期待感が後退すると、先行き不透明な経済に株式相場がシビアに反映しているようだ。
著者プロフィール
- ヴィズマーラ恵子
イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie