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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

ワクチン接種の先を行く欧米諸国のリコール問題とブースター(追加免疫)3回目のワクチン接種研究とは

iStock-StefaNikolic


| 3回目のワクチン接種は本当に必要なのか?

リコールは、最終的には免疫記憶を「リフレッシュ」し、新たな変異を打ち消すのに役立つ。しかし、その時期について日程を決定するにはまだ時期尚早である。
イタリアでは、コロナウイルスワクチンの3回目の投与について、mRNAによるリコールがあるという。それについては、イギリスだけが3回目のバリアントベースのリコールを発表した。
最初の注射で誘発されたアデノウイルスに対する免疫応答によるワクチンミックスのリコールを進め、9月から開始だとイギリスのボリス・ジョンソン首相は言っている。
イタリアのスペランツァ健康大臣は、ワクチンの3回目の投与の可能性は高く、変異体をカバーできるように変更される「ブースター(追加免疫)」 のワクチン接種が必要であると発表した。


| mRNAによるリコール、 各国での3回目投与の実験

○アメリカでは、すでにモデルナ社製のmRNAワクチンで3回目の追加免疫をテストしている。
モデルナ社は、南アフリカ変異株に対して低用量のアドホック(南ア種を限定特化した)製品も作った。また、同社の発表によれば、インド亜種に対しても機能する事はもちろんのこと、コロナウイルスとインフルエンザの単一ワクチンの開発も検討しており、1〜2年で準備が整うことを見込んでいるという。

○イギリスは、新しい亜種からの保護、病院が潜在的な新規感染者の波で圧迫されるを防ぐために、ブースター用量として使用するワクチンを調査するための特定の試験を開始した。
加用量に使うワクチンは、7つの承認済み(または保留中)ワクチンの1つを投与する:Oxford-AstraZeneca、Pfizer-BioNTech、Moderna、Novavax、Valneva、Janssen、Curevac。
これまで英国ではアストラゼネカ社製のワクチンとアストラゼネカワクチンは使われていた。
まずは、これら2つのワクチンを使って2度のアストラゼネカワクチン投与に加えて、第3回目はファイザーワクチンの追加投与を行ってみるという実験である。既に2886人の治験者が参加しており、すべての治験参加者は免疫応答や副反応を測定するために採血を行い、完全監視の下で影響を調査研究を行っているという。

○ドイツでは、すでにこのミックスワクチンを実施している。
実際、アデノウイルスベースのワクチン(アストラゼネカおよびジョンソン&ジョンソン)はブースターでは効果が低いため、3回目の投与はメッセンジャーRNA製品を投与する。
その有効性を評価するための試験は進行中である。

○スペインの研究では、600人治験ボランティアを対象としてワクチンミックス(初回投与のアストラゼネカ、2回目のファイザー)は非常に効果的であり、問​​題はないと結論付けている。
特に、2回目の投与で中和抗体の存在が7倍に増加したという。

○イタリアでは3回目の投与は、ワクチンの3回目の投与が必要になる可能性が非常に高いと世界中のほとんどの専門家はそう信じているが、いつ投与するかは不明のまま。
イタリア政府CTS(科学技術委員会)のメンバーでもあるミラノ大学の免疫学者であるセルジョ・アブリニャーニ教授は、「免疫学的観点から、さまざまな種類のワクチンによる「プライム&ブースト」は実行可能であり、おそらく最良の選択でもある」と、述べている。そして、「現時点では、別の亜種に対して有効であるかどうかはわからないが、おそらく今年の秋か来年の年初めより3回目投与を実施する可能性は高い」と付け加えた。

|「ブースター(追加免疫)」3回目の投与に注意を払うべき2つの変数

・ワクチンによって誘発される免疫応答を回避することができる変異体が出現した場合の変数。

・使用中の製品が有効である時点で、循環中のいくつかの変異株でわずかに弱くなる場合の変数。また、その免疫持続時間。

ほとんどのワクチンでは、ブースターが常に必要であるというが、セルジョ・アブリニャーニ教授は、

「通常、ブースターをいつ進めるかを知るための免疫の持続時間は、市場に出る前に研究されるものであって、今、私たちは緊急事態にあり、現場で一生懸命勉強はしているが、免疫応答がどのくらい続くかはわかっていない。
ワクチン接種サイクルの終了後8〜10か月でも高い防御力があることがわかっているが、後でブースターが必要になる場合もある。元の株に対する良好な反応が持続する場合でも、免疫応答を「リフレッシュ」するのか、インド変異株など新たな変異体に対してもチェックしなければならない。」

と、説明している。
今、イタリアでも非常に話題になっているインド変異株については、"英国からのデータから単回投与後にコロナウイルスから保護されていないことがわかっている"と免疫学者は結論付けた。
いずれにせよ、コロナウイルスに感染してもそれほど重症化せず深刻ではない状態であると推定されている。
一方、2回の投与では、確実に保護されているという。

とは言え、未知の世界のものであるワクチンの混合についは、人々は恐れている。

同じくCTS(科学技術委員会)のファビオ・シチリアーノは、

ワクチンの異種投与は、病気の予防のパノラマにおいて目新しいものではありません。すでにインフルエンザとB型肝炎に使用されています。コロナウイルス予防接種では、この組み合わせが承認され、フランス、カナダ、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、英国でさまざまな方法で長い間使用されてきました。

と最新の決定になったステップについてをたどり語っている。

| アストラゼネカワクチンをめぐる、二転三転する変更につぐ変更

これまで、アストラゼネカのワクチンについては、本当に様々なトラブルがあった。

1月29日、まず初っ端からアストラゼネカ社の契約違反などで供給の大幅削減と遅れがあり、ワクチンキャンペーンの出鼻を挫かれた。
3月12日、早々に稀に起こる副反応の血栓症報告、イタリア国内で死亡者も数人報告されてきた時点で投与を一時的に中止、アストラゼネカワクチンを回収、55歳以下の女性に多く見られた血栓症の事例発生。
3月16日、欧州医薬品庁(EMA)は有用性を依然強く確信しているとした。
3月29日、接種再開。イタリアでは接種の適性年齢を当初は55歳以下に推奨していたが、
6月10日、若い人達が相次ぎ副反応を起こす事例(18歳の少女1人死亡)再び中止。60歳未満の人が1回目アストラゼネカを接種していた場合2回目投与はファイザーかモデルナのミックスワクチンを受けることを追加決定した。
6月12日、イタリアでは60歳未満の人へアストラゼネカを投与することを停止した。

ロンバルディア州では、初回接種でアストラゼネカワクチンを接種した60歳未満の市民のリコールについて話し合っている。
6月17日木曜日に異種リコール(異なるワクチンを使用)が始まる予定である。
6月12日から16日までの期間に中断されたアストラゼネカの呼び出しが実行され、その期間にすでに提供された人も呼び出しに追加される。
福祉総局から過去数日間に管轄機関によって下された決定に照らして通信される。
現在、保健省の最新の回覧によれば、「ファイザーまたはモデルナのメッセンジャーRNAワクチンで2回目の接種を受ける必要があり、8〜12週間後に投与される」とされている。
これをもとに、スケジュールどおりにリコールを行うことが可能になるはずである。
同時に 6月21日から6月30日まで予定されていたモデルナワクチンのリコール (約 80,000 件) が 1 週間前倒しされることも発表された。
リコールは、現在の35日ではなく、投与から42日後に行われるという。


いくつかの国際的な臨床研究は、抗体の適切な産生を誘導する異種ワクチンの能力について評価している。
有害反応のモニタリングについてはより多くの注意が払われながら行われており、予備的に同種ワクチン接種プロトコルと比較しながら、9-12週間の間隔で接種された異種用量の抗体(アストラゼネカ-ファイザー)において、より大きな有効性が記録されたとの報告がある。

アストラゼネカと同じ技術ファミリーに属するジョンソン&ジョンソンは60歳未満でも大丈夫なのか?

アストラゼネかとジョンソン&ジョンソンでは、投与量に実質的な違いがある。

イタリアではJ&Jは単回投与である。
非常に限られた範囲ではあるが、ジョンソン&ジョンソンを接種した被験者でいくつかの血栓性を発症した事例が記録されている。
最大限の予防策の原則として、AIFAはアストラゼネカと同じ制限を設けた。
単回投与(1回だけの接種)は疑いのない利点であり、CTS(科学技術委員会)は、選択された症例または特定の集団において、2回目の接種をすることは困難であるとした。
倫理委員会の承認を条件として、60歳未満にも投与する可能性を予測するようになった。

イタリアでは当初、アストラゼネカは55歳未満に適していると考えられていた。
アストラゼネカのワクチンに関連したまれな血栓症の症例がイタリアで再び注目されていた。

また、リグーリア州で若い女性2人が入院したという事例が相次いだ。
VITTは「ワクチン誘発性」と呼ばれ自己免疫メカニズムを強調する。

その後、変更。

アストラゼネカを60代未満に投与することを停止し、ファイザーまたはモデルナを2回目に投与することをCtsが決定した。
実際、最近の有害事象により、保健省は、子供たちにアストラゼネカを投与し続けることの妥当性について新しい意見を求めるようになった。
科学者たちは、ドイツの研究を含む、若者の禁忌に関する多くの研究を検討し、最終的には投薬を中止する必要性に同意した。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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