コラム

働き方改革に不可欠な「空気革命」のやり方

2018年11月29日(木)08時00分

ムードは伝染する。悪いムードも、良いムードも Image Source/iStock.

<コンサルタントがどんなに頑張っても、「空気」が悪ければ組織改革など進まない。悪貨は良貨を駆逐するからだ>

私は現場に入って、企業の目標を絶対達成させるコンサルタントです。「前よりもよくなった」を求める企業ならともかく、事業計画を絶対達成させたいと願う企業と契約していますから、私たちコンサルタントも、企業側も、それ相応の覚悟をもってプロジェクトに臨みます。

最初は双方「やってやるぞ!」という高揚感に包まれ、プロジェクトはスタートするのですが、残念ながら、現場では予期せぬ問題が浮き彫りになってくるものです。

その最たるものが「空気」です。いわゆる組織風土。

組織風土は、人の価値基準を決定付ける重要な要素。特定の脳の神経細胞(俗称:ミラーニューロン)が原因で、人は近くにいる人の言動のみならず思考までも無意識にモデリングします。良くも悪くも私たちは、周囲の人たち、そして空気に「感化」されていく生き物だからです。

つまり、外面(そとづら)はよくても、悪い空気が蔓延している企業に就職すると、どんなに抵抗しても組織の「空気」に感化されていく、ということです。

私ども外部のコンサルタントが現場に入って一番戸惑うのは、想定を超えるほど淀んだ「空気」に侵された組織を目の当たりにしたときです。

「空気」が悪ければ組織改革など、遅々として進みません。お互いの信頼関係が土台としてないと絶対にうまくいかない「働き方改革」などは、単なる掛け声倒れになります。

名目スタンダードと実質スタンダード

それではどのようにして組織の「空気」を「良い」「悪い」「普通」に分類できるのか、二重規範(ダブルスタンダード)という言葉を使って解説していきます。

「ダブルスタンダード」とは、同じ状況において異なる規範・価値基準が不公平に適用されることを言います。「名目スタンダード」と「実質スタンダード」という言葉で表現します。

● 名目スタンダード ...... 組織内の名目上の共通認識・価値観・ルール等(組織全体が同じであることが基本)

● 実質スタンダード ...... 組織内の事実上の共通認識・価値観・ルール等(主導するリーダーなどによって変化する)

要するに「名目スタンダード」は建前で、「実質スタンダード」は本音のこと。

たとえば「名目スタンダード」が「残業は月20時間以内」であっても、「実質スタンダード」が「若いうちは残業100時間ぐらいするのが当たり前。早く帰る奴は仕事が少ないとみなす」だと、二重規範。

つまりダブルスタンダードがまかり通る組織、ということになります。誰も強要はしていません。しかし、どうもそのような「空気」が漂っていて、仕事が定時までに片付いても帰宅できる雰囲気ではないという組織がゴロゴロあります。

「人」ではなく、「空気」が圧力をかけてくるので、よほど空気が読めない人でないかぎり、抗うことは難しいでしょう。

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story