コラム

AIクラウドの覇者が史上最大の企業になる!?

2018年04月06日(金)13時30分

AIクラウドはB向け、クラウドAIはC向け chomboman-iStock.

AI新聞からの転載

マサチューセッツ工科大学のオウンドメディアMIT Technology Reviewは、「How the AI cloud could produce the richest companies ever」というコラムを掲載。AIを搭載したクラウド・コンピューティング・サービスで覇権を握った企業が、史上最大の企業になるという考えを示した。また的確な予測で定評のあるFuture Today Instituteのレポート「2018 Tech Trends Report」でも、AIクラウドをテクノロジー業界の重要トレンドの一番最初に取り上げている。AIクラウドって、本当にそんなにすごいトレンドなんだろうか。

AIクラウドはB向け、クラウドAIはC向け

その前に、まず言葉の定義を確認しておきたい。AIクラウドとは、AmazonのAWSやMicrosoftのAzure、GoogleのGoogle Cloud Platformのようなクラウド・コンピューティング・サービスが進化して、AIの機能を多く載せるようになったもの。もう既に画像認識、音声認識、顔認識、音声生成などの基本的なAI技術がクラウド上に搭載されているが、今後さらに多くのAI機能が搭載されるようになるとみられている。

一方でよく似た言葉で「クラウドAI」という表現がある。iPhoneのsiriやAmazonのAlexa、LINEのClovaなどのデジタルアシスタントが、ありとあらゆるデバイスに搭載される、というような概念だ。デジタルアシスタントのAIがクラウド上に存在し、いろいろなデバイスを通じてユーザーを支援するので、クラウドAIと呼ばれる。日本ではLINEの舛田 淳さんがこの表現を使っているし、僕もこの表現を使って記事を書いたことが何度かある。新しい概念なのでまだ1つの呼び名に収れんしていないが、米国では最近はアンビアント・コンピューティングなどという言葉で、この概念が表現されることが増えてきているようだ。

似ているのでややこしいが、AIクラウドは「AIを搭載した企業向けクラウド・コンピューティング」で、クラウドAIは「ネット上のAIがいろいろなデバイス通じて消費者を支援するサービス」ということになる。企業向けか、消費者向けか、という違いだ。

素人でもAIモデルを作れる時代に

さて話をAIクラウドに戻そう。先日、GoogleのAIサービスを使ってラーメン二郎の画像から店舗名を言い当てるAIが簡単に作れた、というニュースがあった。使用されたGoogleのサービスはGoogle AutoML Visionと呼ばれるAIクラウドだ。

インターネット上から集めたラーメン二郎のラーメンの写真に、その写真がどこの店舗で撮影されたものであるかという「ラベル」データをつけ、Googleのクラウド・コンピューティング・サービスにアップロードするだけ。それだけでAIモデルが作成され、ラーメン二郎で撮影された新しい写真をそのモデルに見せると、どこの店舗のラーメンであるかを94.5%の精度で言い当てたという。

AIエンジニアやデータサイエンティストなどの専門家の知識なしに、素人でもAIのモデルを作ることができるわけだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story