コラム

独裁者アサド「復活」を歓迎する中東諸国...アメリカの意向より大切なものとは?

2022年04月12日(火)18時15分

アサドはロシアのウクライナ侵攻について「ソ連崩壊で失われた世界秩序のバランスを回復し、歴史を修正するもの」と称賛し、シリア国内ではロシアを支持する官製デモが盛んに開催され、国営テレビはロシア支持一色である。

世界全体を俯瞰するならば、シリアは間違いなくロシアと共に権威主義陣営に属し、西側の自由主義陣営と対立する存在だ。しかし中東に視点を移すと、シリアはアラブ諸国にとって共通の脅威であるイランを牽制するため仲間に引き入れるべき存在なのである。

地域の安全保障を優先課題とするアラブ諸国にとって、ロシアもまた対立すべき相手ではない。それはロシアを含むOPECプラスの原油生産計画を湾岸産油国が堅持していることや、ウクライナ侵攻後もUAEやサウジ、エジプトがロシアとの外交に積極的なことからも明らかだ。

ロシアにとっても盟友シリアの国際社会への復帰は重要だ。それは、制裁によりロシアの孤立化を目指す西側諸国にとって「蟻(あり)の一穴」となるかもしれない。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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