コラム

FIFAは「サッカーに集中しよう」と言うが、W杯は非政治的ではあり得ない

2022年12月14日(水)11時40分

国歌を歌うことも歌わないことも政治的な含意を避けられないなかで、「サッカーに政治を持ち込むな」という呼びかけはほとんど意味をなさない。もしイランの選手たちが国歌を歌うことのみが非政治的で望ましい振る舞いだと見なされるなら、そのまなざしは既に特定の仕方で政治的である。

FIFAは今大会に合わせて「FOOTBALL UNITES THE WORLD(サッカーは世界をつなぐ)」という標語を掲げた。リオネル・メッシなど数々のスター選手が出演するCMを見た人も少なくないはずだ。

確かにワールドカップは世界を結び付けるメガイベントで、だからこそあらゆる背景を持った人々がそこに関心を寄せる。

結局、ワールドカップを見ながらサッカーだけを見ることなどできない。中国の人々はマスクなしの観客を見たし、同性愛者の人々は虹色の「ONE LOVE」がそこにないことを見た。

そして各試合のフィールドを見ながら、私たちは数々の移民労働者が傷つき、そこで亡くなった場所をまさに見ているのだ。

<2022年12月20日号掲載>

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プロフィール

望月優大

ライター。ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長。著書に『ふたつの日本──「移民国家」の建前と現実』 。移民・外国人に関してなど社会的なテーマを中心に発信を継続。非営利団体などへのアドバイザリーも行っている。

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