Newsweek

冷泉彰彦

プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

日本の国是「専守防衛」は冷徹な軍略でもある

2017年04月20日(木)16時40分
日本の国是「専守防衛」は冷徹な軍略でもある

防衛省の敷地内に設置された迎撃ミサイルの発射装置 Toru Hanai-REUTERS

<国際世論を味方に付けなければならない現代、先制攻撃が得策とは限らない。第二次大戦の「旧枢軸国」である日本が専守防衛を国是とするのは一つの軍略でもある>

北朝鮮危機の緊張が高まりつつある今月12日、トランプ大統領はFOXビジネスニュースのマリア・バートロモのインタビューに応えて「我々はアルマダ(大艦隊)を送っている。大変にパワフルな艦隊だ。」と述べていました。

この発言の前の今月8日に米海軍は、原子力航空母艦のカール・ビンソンを旗艦とした空母打撃群を北へ向かわせているという発表をしていたことから、それが「アルマダ」だということになり、米国が北朝鮮の核開発を封じ込める意図を明確に表現したメッセージだと受け止められました。

ですが、それから一週間後になって、実はカール・ビンソンを旗艦とする艦隊は、12日の時点でもインドネシア近海を南へ向かっており、オーストラリアとの統合軍事演習に参加していたのだということが明らかになりました。

一部には「連絡ミスではないか」などという報道もありましたが、そんなことはないでしょう。では、騙そうとしてやっていたのでしょうか? それだけではないと思います。軍事衛星などを通じて情報収集している国(例えば中国やロシア)から、情報が洩れているかどうか試していたのではないでしょうか。

米国では、その後、ホワイトハウスのスパイサー報道官が釈明したりしていますが、こんな重要な軍事行動について情報が錯綜するはずはありません。ますますもって、何らかの意図でそうした言い方をしていたと考えられます。いわゆる「軍略」というものです。

【参考記事】米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明までの経緯

日本に軍略はあるか?

日本にも軍略はあります。日本の軍略は専守防衛論という国是です。

今回の北朝鮮危機に際して日本政府は、北朝鮮が日本領海内に弾道ミサイルを発射した場合、「武力攻撃切迫事態」へ認定する「検討に入った」と報じられています。

安全保障関連法では、緊迫度が三段階に分けられています。(第一段階)武力攻撃予測事態、(第二段階)武力攻撃切迫事態、(第三段階)武力攻撃発生事態の3つの段階であり、その中の「第二段階」となる「武力攻撃切迫事態」になれば、防衛出動を発令し、自衛隊を前線に配備することができる、その検討に「入った」というわけです。

ちなみに、個別的自衛権を発動して武力による反撃が可能となるのは、第三段階つまり攻撃が発生したケースだけとなります。日本の場合は「専守防衛」が国是である以上、そうなっているわけです。

そう申し上げると、専守防衛では十分な防衛ができないので、敵の攻撃が切迫した場合は先制攻撃ができるようにせよという声があります。どうして、日本だけが「専守防衛」などという自主規制をしなくてはいけないのか、というわけです。では、軍略ということで考えた時に、この専守防衛論というのは、マイナスなのでしょうか?

プロフィール

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

注目のキーワード

注目のキーワード

ニューストピックス

本誌紹介

特集:北朝鮮の歴史

本誌 最新号

特集:北朝鮮の歴史

核・ミサイル開発に日本人拉致問題、テロ活動...... 不可解過ぎる「金王朝」を歴史で読み解く

2017年11月28日号  11/21発売

人気ランキング

  • 1

    北朝鮮「亡命兵士」の腸が寄生虫だらけになった理由

  • 2

    東日本大震災の瓦礫に乗って、外来種がやって来た

  • 3

    ジャーマンシェパード2頭に1頭が安楽死 見た目重視の交配の犠牲に

  • 4

    北朝鮮「亡命兵士」の命を脅かす寄生虫の恐怖

  • 5

    北朝鮮の金正恩指導部に亀裂? 最側近の軍司令官を処罰

  • 6

    「筋トレは、がんによる死亡リスクを31%下げる」と…

  • 7

    北朝鮮、亡命の兵士を追って軍事境界線を越境してい…

  • 8

    北朝鮮「兵士亡命」が戦争の引き金を引く可能性

  • 9

    犬も鬱で死ぬ 捨てられたショックで心は修復不可能に

  • 10

    もう体に合わないことはない! ZOZO、採寸用ボディ…

  • 1

    北朝鮮「亡命兵士」の腸が寄生虫だらけになった理由

  • 2

    北朝鮮「亡命兵士」の命を脅かす寄生虫の恐怖

  • 3

    北朝鮮「兵士亡命」が戦争の引き金を引く可能性

  • 4

    サンフランシスコ「従軍慰安婦像」への大阪市対応は…

  • 5

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 6

    飛び級を許さない日本の悪しき年齢主義

  • 7

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 8

    アメリカで黒人の子供たちがたたき込まれる警官への…

  • 9

    「人肉は食べ飽きた」と自首した男と、とんでもない…

  • 10

    子供を叩かないで! 体罰の影響を科学的に研究 

  • 1

    北朝鮮「亡命兵士」の腸が寄生虫だらけになった理由

  • 2

    北朝鮮の電磁パルス攻撃で「アメリカ国民90%死亡」――専門家が警告

  • 3

    北朝鮮「兵士亡命」が戦争の引き金を引く可能性

  • 4

    北朝鮮「亡命兵士」の命を脅かす寄生虫の恐怖

  • 5

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 6

    人はロボットともセックスしたい──報告書

  • 7

    北朝鮮経済の「心臓」を病んだ金正恩─電力不足で節約…

  • 8

    トランプは宣戦布告もせず北朝鮮を攻撃しかねない

  • 9

    北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」

  • 10

    「トランプ歓迎会に元慰安婦」の陰に中国?

もっと見る

Picture Power

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい