コラム

このシンプルさの中に、日系人のアイデンティティーが息づく

2016年02月09日(火)11時05分

Kikuno.

Kevin J. Miyazakiさん(@kevinmiyazaki)が投稿した写真 -

母の従姉妹。山口県の大島郡和佐にて

 彼の写真の中にアイデンティティーが絡みついてくる最も大きな理由は、彼が日系人であることだ。16年前に70歳で亡くなったミヤザキの父は、第二次世界大戦中、母国であるアメリカそのものの手により強制収容所に送り込まれた12万人以上の犠牲者の1人である。

 とはいえ、現在49歳になるミヤザキが自分の中にある日本人を意識し始めたのは、大人になってある程度年齢を経てからだという。

 白人が大多数を占めるウィスコンシン州のミルウォーキー郊外で育った彼は、多くの日系人がそうであるように、単に自身を"普通のアメリカ人"として認識していた。子供時代、食べ物や家族の会話に出てくる単語には日本的なものがあったが、文化的、あるいはエスニッック的な違いで言えば、むしろアメリカ的で、それを喜ばしいものと考えていた。

 だが、現実はそうではなかった。そうした中でここ20年ほど、彼の中にある日本人の血、あるいは自分の祖先について考えるようになっていったという(むろん、現在でも最も大きなアイデンティティーはアメリカ人ではあるが)。

 昨年7月、ミヤザキは85歳の母親と、生まれて初めて日本を訪れた。また、同じく昨年には「エコー(反響)」というタイトルで、自らの家族の歴史や移民、記憶を探るプロジェクトを制作し始めている。エコーは、母方の1世がハワイで19世紀後半に発刊した日系新聞『コナ反響』にちなんだものだ。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Kevin J. Miyazaki @kevinmiyazaki

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄、今期事業利益は前年比25%減の見通し 市

ワールド

中国銅輸入、4月は前月比‐7.6% 価格上昇で需要

ワールド

フィリピン第1四半期GDP、前年比+5.7%で予想

ビジネス

景気動向一致指数、3月は前月比2.4ポイント改善 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story