zzzzz

コラム

Heatに覆われたイスラエルへの愛憎──アイデンティティを超えて

2018年04月07日(土)17時07分

Daniel Tchetchikさん(@danieltchetchik)がシェアした投稿 -

インタビューでその理由を語ってくれた。まず、紛争や暴力の匂いがしない理由については、政治的な作品は後退的な面を持っているからだという。イスラエルの兵士たちもパレスチナ人たちも、戦いと暑さの中で苦しんいる。どちらも勝つことはないだろう、だから自分は実在主義的なものとディールし、どちらが正しいとか悪いとかは追求しないのだと。

何かに取り憑かれた、という点については、こう語ってくれた。確かにそうなっていると思うし、そうした要素を含んでいると評価されるのは嬉しい――。

だが、何に取り憑かれているのかは、チチク自身も説明できないという。もしかしたら自分自身の不安、現在や未来に対する恐れ、あるいは我々よりはるかに強い何かに対する恐れから、この感情は来ているのかもしれないと彼は語った。

さらに彼には「ユダヤ人であるか」と質問した。単に、確認する意味合いでだ。するとストレートには答えず、代わりにこんな答えが返ってきた。自分自身を人間以外の何かであると感じることはないし、他人に対してもそのように見ている――。

そして再び、自身の写真について触れ、そうした意味で、作品は宗教や土地といったアイデンティティ的なものと相反するとチチクは言う。そうした価値観はむしろ作品に取り入れたくない、と。

こうしたチチクの写真・人生哲学は、彼の生い立ちから来ているのかもしれない。彼はイスラエルのみならず、アメリカ、ドイツという異なる環境でも育ってきた。さまざまなHeatを経験したことだろう。

今は世界で最もホットな場所の1つであるイスラエルで、独自のHeatを見つめて、その探究を行っているのである。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Daniel Tchetchik @danieltchetchik

20240604issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月4日号(5月28日発売)は「イラン大統領墜落死の衝撃」特集。強硬派ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える グレン・カール(元CIA工作員)

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3000件増の21.9万件 予

ビジネス

FRBの現行政策、物価目標達成に「適切」=NY連銀

ビジネス

米GDP、第1四半期1.3%増に下方改定 22年第

ビジネス

EXCLUSIVE-米テスラ、中国での高度運転支援
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカで増加中...導入企業が語った「効果と副作用」

  • 2

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 3

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程でクラスター弾搭載可能なATACMS

  • 4

    地球の水不足が深刻化...今世紀末までに世界人口の66…

  • 5

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 6

    国立大学「学費3倍」値上げ議論の根本的な間違い...…

  • 7

    AI自体を製品にするな=サム・アルトマン氏からスタ…

  • 8

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 9

    EVと太陽電池に「過剰生産能力」はあるのか?

  • 10

    F-16はまだか?スウェーデン製グリペン戦闘機の引き…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story