最新記事

経済産業省

今夏の東芝株主総会、経産省の参与がハーバード大の基金運用ファンドに干渉か

2020年12月24日(木)13時04分

東芝が7月末に開いた定時株主総会を巡り、経済産業省の参与が米ハーバード大学の基金運用ファンドに対し干渉していたことが分かった。REUTERS/Toru Hanai

東芝が7月末に開いた定時株主総会を巡り、経済産業省の参与が米ハーバード大学の基金運用ファンドに対し、会社側の意にそぐわない形で議決権を行使した場合、改正外為法に基づく調査の対象になる可能性があると干渉していたことが分かった。4人の関係者が匿名を条件に明らかにした。

産業界に影響力を持つ経産省関係者の不透明な関与は、企業統治(コーポレートガバナンス)の強化に動く日本政府や経済界の取り組みに影を落としかねない。一部株主から疑義が呈されている、東芝の総会運営への関心をさらに高める可能性もある。

今年の東芝の株主総会は、物言う株主の外資系ファンドが社外取締役候補を独自に提案し、会社側と対立した。東芝の議決権4%超を保有するハーバード大基金は大株主の1人として動向が注視されていた。

関係者3人によると、ハーバードは経済産業省参与に5月に就任した水野弘道氏から説明を受け、議決権行使を断念した。ハーバードはその後に独自の調査を行い、水野氏の説明には法的な根拠がないと認識したという。

水野氏がハーバード大基金の議決権行使に干渉したことは、先に英フィナンシャル・タイムズ紙が報じているが、調査対象になる可能性をハーバード側に伝えたことなど、詳細な経緯が明らかになるのはこれが初めて。

総会の数週間前に接触

関係者2人によると、水野氏がハーバード大基金と接触したのは総会の数週間前。同基金が東芝の企業統治に不満を持っていることを知り、基金を運用するハーバードマネジメントカンパニーのN・P・ナーベカー最高経営責任者(CEO)に連絡した。3月まで日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者を務め、米電気自動車大手テスラの社外取締役でもある水野氏は、もともとナーベカー氏の知り合いだったという。

両氏のやりとりは電話やメールで行われ、最初は友好的だった議論が、7月末の総会前の週末までには行き詰まった。外国投資家が代理人に議決権行使の内容を指示する期限が数日後に迫る中、水野氏は、会社側と対立する内容の議決権行使をした場合、改正外為法に基づく調査が行われる可能性に言及した。

改正外為法では複数の外国投資家が合意し、上場会社の議決権を共同で行使する場合、議決権の合算が10%以上だと新たな届出対象となる。

関係者によると、やりとりの中で水野氏が特に取り上げたのが、東芝の筆頭株主であるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントとハーバード大基金の関係性。同基金はエフィッシモにも出資していた。当時の両者の議決権を合算すれば2割になった。

両者が共同で議決権を行使することを合意していたかどうかは不明。東芝と水野氏の関係も分かっていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中