最新記事
ビジネス

テレビ・映画に加え、「第3次ストリーミング戦争」でネット配信も不調...ハリウッドに「大収縮」の危機

2024年2月12日(月)12時38分
俳優組合 ハリウッド ストライキ

米国では俳優組合と全米脚本家組合による、痛みを伴う「ダブルストライキ」が終わり、1月初めには映画「オッペンハイマー」とテレビドラマ「メディア王 ―華麗なる一族―」の成功を祝うスターらの姿がレッドカーペットに戻ってきたが――。写真は俳優組合がストライキ終結に向け、全米映画テレビ製作者協会と暫定合意した際の関係者ら。昨年11月、カリフォルニア州ロサンゼルスで撮影(2024年 ロイター/Mike Blake)

米国では俳優組合と全米脚本家組合による、痛みを伴う「ダブルストライキ」が終わり、1月初めには映画「オッペンハイマー」とテレビドラマ「メディア王 ―華麗なる一族―」の成功を祝うスターらの姿がレッドカーペットに戻ってきた。だが、皆の心を悩ませていたのは、業界の存続に関わる脅威、つまり「ハリウッドは縮小しつつある」という懸念だった。

「テレビドラマの黄金期(ピークTV)」は終わった――これが、ロイターの取材に応じたエンターテインメント企業幹部やエージェント、銀行関係者ら17人の結論だ。オリジナルの連続ドラマや映画は減少し、予算は慎重に精査され、映画館の利益はますます圧迫される中で、テレビ・映画産業では厳しい経済的現実への適応が進んでいる、というのが業界有力者の見立てだ。

「大収縮が迫っている」。あるベテランのテレビ局幹部は、匿名を条件に語った。「コンテンツの量も製作費も、大幅に削減されることになるのではないか」

この「収縮」説はまもなくはっきりと形を取るだろう。ウォルト・デイズニー、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー、フォックスが2月中に四半期業績を報告するからだ。こうした状況を背景にメディア企業合併の話も進んでおり、最近ではパラマウント・グローバルのオーナーと、映画「トップガン マーベリック」の共同製作に名を連ねたスカイダンス・メディアのデービッド・エリソン最高経営責任者(CEO)の間で買収交渉が行われた。

投資銀行TDコーエンのアナリストによる試算では、放送・ケーブルテレビ業界の広告収入は2023年末の時点で前年比7%の減少となっており、LSEGによればディズニーの広告収入は総額で11.7%減少している。ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーは2023年1-9月に広告収入が13%減ったと報告している。出版やラジオと同様、既存のテレビ放送でもデジタル広告による空洞化が進んでいる。

2024年も大幅な改善は見込めない。TDコーエンの予想では、放送・ケーブルテレビの広告収入はさらに7%減少する見通しだ。メディア各社はデジタル広告事業を拡大中だが、コーエン・グループによると、それでも依然として広告収入全体の80%は、衰退する既存テレビ事業が稼いでいるという。

この業界で未来へのけん引役と期待されていたのはストリーミング(ネット配信)サービスだが、何年にもわたって資金を注ぎ込んでみたものの、なかなか収益性は上がらない。業界が、調査会社モフェットネーサンソンの言う「第3次ストリーミング戦争」に突入した今、競争によって「絶対に持続不可能な」投資があおられる一方で、製作費は2022年の水準を下回るとみられる。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ軍事訓練員派遣の予定ない=軍制服組ト

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、FRB当局者は利下げに慎

ビジネス

米国株式市場=ナスダック最高値、エヌビディア決算控

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中