最新記事

インタビュー

「新しい刺激」に飢えた、若き表現者・村上虹郎。

2021年1月8日(金)11時30分
撮影:タカコノエル 文:佐野慎悟 ※Pen Onlineより転載

自分にとって心地のいい環境では、新しい自分に出会えない。

penonline20210108-buzz03-3.jpg

他ジャンルのクリエイターとともに作品を作り上げることに対して、「以前は自分で写真を撮ったり、言葉をポツポツと連ねることの方が多かったかもしれない」と語る村上。「ただ、昔はノリだけでできたけど、次第にいまの自分では、なにかをひとりでつくり上げるのに、経験や知識が圧倒的に足りないと思うようになりました。だからいまは、ただひたすらに蓄積の時」

──まったく着地点が見えない状態で、お互いが表現をぶつけ合う形ですね。なぜあえて計画的な要素を排除するのでしょうか?

村上: それはやっぱり、見たことがないものを見たいから。根本的に、新しい感覚とか、新しい世界に飛び込みたいという欲求が常にあります。そういう意味でいうと、毎回違う脚本で、毎回違う役を演じることができる役者は、僕にとっては最高の生き方だと思います。ただ、それは自分の行為としては新しいことではなかったりします。自分にとって心地のよい場所で、馴染みの人とばかり触れ合っていても、新しい自分には出会えないと思うんです。自分のフィールドの外にいる人と出会うことで、「あんたってここが全然足りてないね」とか、「ここがすごいよね」とか、客観的な意見に触れることができます。心地のよい自分の場所と、外の世界。そのどちらもすごく重要で、バランスが大事だなって、最近特に思います。

penonline20210108-buzz03-4.jpg

いま欲しいものを尋ねると、「お金が欲しい」との回答。「思い立ったことに際限なく使えるお金があったら、もっと経験が広がるのになって思うんです。たとえば、彼女とか親友じゃなくて、今日知り合ったおじさんと、居酒屋にいくような感覚で突然スペインに遊びにいくとか(笑)」

penonline20210108-buzz03-5.jpg

村上が最近いちばん気になっているのは、秋屋蜻一という作家の絵画作品。「あまり素性が明かされておらず、いくら調べても、どこで作品を買えるのか、どこで活動されているのか、まったく情報が掴めません。でも、いつかなにかしらの形でお近づきになりたいです」

──映画以外にも、写真や、アートや、音楽など、幅広い分野に興味を広げているイメージですが、その裏にはやはり、新しい刺激を求める欲求がありそうですね。一度ハマったら、かなり深掘りしていくタイプですか?

村上: 全然違います(笑)。なんでも最初のインパクトが好きだから、興味の矛先は次から次へと移っていきます。たとえば写真にハマっていたときは、毎日カメラを持ち歩いて、なにを撮っても楽しくて仕方がなかったけど、しばらくすると、最初の衝動は薄れてしまいます。カメラというものは、自分と他者の間にある一つのコミュニケーションツールとも捉えられますが、僕は次第に、なにも武器を持たず、もっと直感的にコミュニケーションを取りたいと思うようになりました。なんでもただ無闇に深堀りしても意味がないので、自分に必要なものを見極めて、適切な距離感を保って向き合う感じですね。

<関連記事>激アツの恋愛ストーリーが話題、モデルや俳優もこなすドラマーKaito

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米、来週にも新たな対中関税発表 EVなど戦略分野対

ビジネス

米5月ミシガン大消費者信頼感67.4に低下、インフ

ビジネス

米金融政策、十分に制約的でない可能性=ダラス連銀総

ビジネス

6月利下げへの過度な期待は「賢明でない」=英中銀ピ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 9

    「一番マシ」な政党だったはずが...一党長期政権支配…

  • 10

    「妻の行動で国民に心配かけたことを謝罪」 韓国ユン…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中