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レディー・ガガも闘った──『スター誕生』主演の歌姫3人が乗り越えた過去の自分

2018年09月25日(火)15時00分
有元えり

今年8月第75回ベネチア国際映画祭にて。日本での映画劇場公開は12月21日 Tony Gentile-REUTERS

<1954年のジュディ・ガーランド、1976年のバーブラ・ストライサンド、そして今年度作の主演にノーメイクで挑んだレディー・ガガ。3人の時代の歌姫たちは皆、過去の辛い経験を演技に投影させた>

今年、各地の映画祭で大絶賛され、第31回東京国際映画祭オープニング作品にも決まったレディー・ガガ初主演の『アリー/スター誕生』。3度目のリメイクとなる今作は、魂の叫びのようなガガの歌声に注目が集まっている。コンプレックスに苛まれ、自分に自信が持てないアリーを演じるにあたっては、ガガ自身の過去の暗い記憶が投影されているという。

主演女優の壮絶な過去の経験が役作りに凄みをもたしたという点では、ガガによる今作以前の過去2作品も同じである。

『スター誕生』は、落ち目の大スターと、彼のおかげで成功を手にする女優(作品によっては歌手という設定)による愛と挫折を描く映画だが、1937年の『スタア誕生』をはじめとして4回も作られている。

なかでもさまざまな映画賞を受賞した2作品、1954年のジュディ・ガーランド版『スタア誕生』、1976年のバーブラ・ストライサンド版『スター誕生』は名作中の名作と評価が高いが、彼女たちもまた実生活でそれぞれに苦悩の多い人生を送ってきた。そのバックストーリーを知れば映画はもっと深みを増し、面白くなるだろう。

薬物と色に溺れたジュディ・ガーランド

ジュディ・ガーランドについては、1939年の大ヒットミュージカル映画『オズの魔法使』で演じたドロシーのイメージに重ねて、清純で明るい女優だと思い込んだ人も多いというが、実際のジュディは真逆でその人生は悲劇に満ちていた。

デビュー当時のジュディは肥満気味で、ダイエットのために当時は推奨されていた覚せい剤アンフェタミンをわずか13歳で常用するようになる。『オズの魔法使』の撮影時も、ハイの状態で挑んでいたというから、その事実を知るとあの名作も見え方がずいぶん変わってきてしまう。同時に性にも奔放で、デビューも枕営業で決まったという説もあるから驚きでしかない。

薬物の常用はやがて精神不安と神経障害をもたらし、スタジオへの遅刻や出勤拒否は日常茶飯事となった。自殺未遂も度々起こし、薬物治療のための入退院を繰り返したという。さんざん撮影を振り回した結果、ジュディは所属していたMGMから解雇され、ハリウッドから締め出しを受ける羽目になる。

その後は、歌手活動に絞って、ロンドンやニューヨークでのコンサートに専念していたが、1954年には再び映画界にカムバック。その復帰作がワーナー・ブラザーズ社が手掛けた『スタア誕生』だった。情感あふれる圧巻の歌唱力は健在で、ジュディの才能を再度世に知らしめる作品になったのだが、時に鬼気迫るその歌声は、彼女の悲惨な実生活をオーバーラップさせて聴くと胸が痛くなるほど切ない。

ちなみに撮影時におけるジュディの遅刻や出勤拒否は相変わらずで、その結果、制作費は跳ね上がり、ワーナーは怒りを露にする。ビッグメーカーのワーナーを敵にまわしたのが影響したのか、確実ともいわれたアカデミー主演女優賞を逃すことになった。

その失意から、ジュディの私生活は再び荒れ始めるのだが、晩年のジュディについては、レネー・ゼルヴィガー主演のジュディの伝記映画『ジュディ(原題はJudy)』(2019年公開)で描かれている。

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