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I'm loving itからI'll be backまで、あの言葉はなぜ記憶に残るのか

2017年6月22日(木)17時12分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 歌はどうだろうか。すぐに思い出して口ずさむ歌詞がないだろうか? おそらく「Don't stop believin'」(自分を裏切らないで/ジャーニー)、「All you need is love」(愛こそはすべて/ビートルズ)、「It's the end of the world as we know it」(これが世界の終わり/REM)といった歌詞が、思い浮かぶのではないだろうか。

 では、広告はどうだろう。ナイキやアメリカ陸軍のスローガンを尋ねられたら、すぐ正確に言うことができるだろうか。

 映画や歌やマーケティングの言葉が繰り返され、長く記憶される理由は何だろう。これらの言葉にはどのような特性があるおかげで、頭のなかにすんなり入って長くとどまり、すぐ思い浮かぶのだろう。この疑問には答えておかなければならない。というのも、あなたが他人の記憶に影響をおよぼしたいと思っているとき、あなたの言葉が繰り返されるのを耳にすれば、努力が成功した何よりの証明になるからだ。

 なかには直観的に繰り返される言葉もあるだろう。しょっちゅう聞いたり目にしたりする言葉(「I'm lovin it」マクドナルドの広告)、強い感情を伴う言葉(「Frankly, my dear, I don't give a damn〈今更どうでもいいよ〉」映画『風と共に去りぬ』より)、短い台詞(「I'll be back」映画『ターミネーター』より)、発音しやすい言葉(「Wax on. Wax off〈ワックスかけて、ワックスとる〉」映画『ベストキッド』より)、韻を踏む言葉(「I feel the need... the need for the speed〈僕は必要性を感じるんだ......スピードに対する必要性を〉」映画『トップガン』より)などは、繰り返したくなる傾向がある。しかし直観以外にも、言葉の繰り返しを促す特性は存在するものだろうか。それがわかれば、相手から繰り返してもらえるコンテンツを上手に作り上げるのに役立つはずだ。

ポータビリティー

 コーネル大学の科学者チームは、引用される機会の多い映画の台詞の特性について研究を行なった。チームは研究に先立ち、インターネット・ムービー・データベース(IMDb)のユーザーがタグを付けた何千もの台詞を分析するコンピュータープログラムを構築した。そのうえで、よく引用される台詞と、同じ映画の同じ登場人物がべつの場面で語る同じ長さの台詞との比較が行なわれた。

 チームの観察からは、記憶に残る台詞は様々な文脈に適用可能であることがわかった。たとえば『ジョーズ』の有名な台詞「You're gonna need a bigger boat(大型船を呼ぼう)」にはポータビリティー(移植しやすさ)があり、もっと資源が必要であることを暗示するため、水のなかに限らずあらゆる状況に応用できる。ちなみに私は最近、ビッグデータについてのプレゼンテーションでこのフレーズを使った。

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