最新記事

脳科学

I'm loving itからI'll be backまで、あの言葉はなぜ記憶に残るのか

2017年6月22日(木)17時12分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Wirepec-iStcok.

<特定のメッセージが頭の中にすんなり入って長くとどまり、すぐに思い出してもらえるのはなぜか。認知科学者のカーメン・サイモンによれば、カギは「ポータビリティー(移植しやすさ)」だ>

映画の台詞や歌の歌詞、広告のスローガン......。長く記憶され、繰り返される言葉はどのようにして生み出されるのだろうか。

人の行動の9割は記憶に基づくといわれる。ビジネスにおいては、いかに顧客に自社の商品やサービスを記憶してもらい、消費行動を取ってもらうかが重要だ。そのためには15ある変数をうまく組み合わせて使えばいいと、認知科学者のカーメン・サイモンは言う。そうすれば「あなたについての記憶は相手の心に残り、狙い通りの行動が引き出されるだろう」。

Adobe、AT&T、マクドナルド、ゼロックスなどの大企業を顧客に持つサイモンは、著書『人は記憶で動く――相手に覚えさえ、思い出させ、行動させるための「キュー」の出し方』(小坂恵理訳、CCCメディアハウス)で、記憶の研究に関する成果から"忘れさせない"実践的なテクニックを紹介している。

本書から一部を抜粋し、4回に分けて転載するシリーズ。この第4回では、「第7章 メッセージを繰り返させる――あなたの言葉を確実に繰り返してもらうテクニック」から抜粋する。

「繰り返し」は15の変数の1つだが、肝心なのは「何度も同じメッセージを繰り返すこと」ではなく、「相手が自発的に同じメッセージを繰り返してくれること」だという。

※第1回:謎の大富豪が「裸の美術館」をタスマニアに造った理由
※第2回:顧客に記憶させ、消費行動を取らせるための15の変数
※第3回:なぜ人間は予測できない(一部の)サプライズを喜ぶのか

◇ ◇ ◇

 私たちはポイントAで誰かと情報を共有するとき、相手がそれを保持してポイントBで検索し、次の行動に役立ててほしいと願う。そのためにはポイントAで、長続きする鮮明な記憶を創造しなければならない。記憶を確実にするためのテクニックのひとつが繰り返しだ。

 繰り返しが記憶に影響をおよぼすことは疑いようがない。しかし、本書は記憶を未来の視点でとらえるのだから、本章においても、ポイントAで何度も同じメッセージを繰り返すことには注目しない。それはテクニックの一部でしかない。肝心なのは、ポイントBで相手が自発的に同じメッセージを繰り返してくれることだ。長期間にわたって繰り返してもらえるメッセージを創造する方法について、これから本章では述べていくつもりだ。

 誰かが引用した映画の台詞が記憶に残っていないだろうか。会議で「ヒューストン、トラブル発生だ」(『アポロ13』より)という言葉を聞いたり、家族との議論で「真実は、お前の手には負えない」(『ア・フュー・グッドメン』より)、友人とのディナーで「彼女と同じものを」(『恋人たちの予感』より)といった言葉を聞いたりしていないだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中