最新記事

ドイツ総選挙

ドイツで極右政党が第3党に 躍進の3つの要因

2017年10月5日(木)16時10分
メリナ・デルキッチ

メルケルの演説中にスローガンを叫ぶAfD支持者(ザクセン州、9月6日) Rainhard Krause-REUTERS

<連邦議会に初の議席を獲得した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」。ナチスの過去を持つ国で過激な主張が浸透した訳は>

獲得議席は94議席、得票率は12.6%――9月24日に行われたドイツ総選挙で、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第3党になった。躍進の理由は既におなじみのもの。ポピュリズム、反移民・反イスラム感情、2大政党の協力体制への反感に訴えたおかげだ。

ミナレット(イスラム礼拝所の尖塔)禁止などを主張してきたAfDが連邦議会に議席を得たのは初めて。ドイツで極右政党がこれほど多くの議席を手にしたのも、ナチス以降初めてだ。

これはヨーロッパ各国に広がる現象の最新の形だ。ハンガリーでは、強権的なオルバン政権が第3党で極右のヨッビクと協調。フランスの極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は今年5月の大統領選で敗れたものの、得票率は34%に迫った。

アメリカでもそうだ。昨年の大統領選では、反移民的主張をぶち上げた候補が勝利した。

過激な政党は当初、マイナーな存在として軽視されがちだった。その1つだったAfDがここまでのし上がったのはなぜか。要因は3つある。

第1に、ドイツの世論調査機関インフラテスト・ディマップによれば、総選挙でAfDに投票した有権者の半数近くは、アンゲラ・メルケル首相率いる保守派政党、キリスト教民主同盟(CDU)の元支持者だ。メルケルは自党の立場を離れ、大連立の相手だった社会民主党(SPD)の進歩的政策に同意し過ぎると批判されていた。

言い換えれば、行き過ぎた協調が政治の分断を加速させている。「ある人がある党に、別の人はもう1つの党に投票したのに常に連立政権が誕生するなら、どちらにも不満がたまる」と、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院ヨーロッパ研究部門責任者、エリック・ジョーンズは話す。

反エリート、反移民の力

第2に、ポピュリズムには侮れない力がある。

経済が好調なドイツでも、地方の低所得層は都市部の高所得層並みの生活に手が届かず、高GDPと低失業率の恩恵を感じられない。ドイツ経済調査研究所によれば、国民所得の3分の1、総資産の6割を手にしているのは所得上位10%。貧困率は上昇し、15年には東西統一後最高の15.7%に達している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の

ビジネス

米、両面型太陽光パネル輸入関税免除を終了 国内産業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中