最新記事

東日本大震災10年

福島第一原発事故10年、担当相だった細野豪志氏の「反省」と「課題」

2021年3月11日(木)15時04分
長岡義博(本誌編集長)
福島第一原発

事故直後の福島第一原発1号機の空撮写真(2011年3月23日撮影)。炉心溶融後の水素爆発で屋根が吹き飛んでいる Japan Defence Ministry via Reuters TV-REUTERS

<3月11日で東日本大震災と福島第一原発事故から10年。当時、民主党政権の担当相として、最前線で事故処理・対応に当たった細野豪志衆院議員が語る反省と課題と希望>

3月11日で東日本大震災の発災から10年を迎えた。マグニチュード9.0の大地震に大津波、さらに全電源消失による福島第一原発の炉心溶融と水素爆発事故は東北地方に大きな被害を残し、その傷はまだ十分癒えたとは言えない。震災関連死を含む死者数は2万2000人に達した。

震災当時、民主党政権の原発事故収束担当相・環境相として、最前線で事故処理と対応に当たった細野豪志・衆院議員が3月1日、社会学者の開沼博氏と『東電福島原発事故 自己調査報告書』(徳間書店)を上梓した。田中俊一・初代原子力規制委員会委員長、近藤駿介・元原子力安全委員会委員長、佐藤雄平・前福島県知事ら行政組織のトップだった人たちから、福島原発の廃炉作業をルポした漫画『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』作者の竜田一人のような現場レベルの人たちまで、12人の言葉から「ファクト」を切り出す証言・提言書だ。

廃炉作業の過程で発生した原発汚染水を処理した水は125万立方トンに達し、1000基を超えるタンクに収容されているが、来年秋には貯蔵容量が満杯になる。燃料デブリの除去が必要な廃炉作業が終わるにはあと30~40年かかる。事故がどう収束するのか誰も先が見えず、しかしコロナ禍の中、同じ「見えない脅威」である放射能への関心は薄れつつある。

12人の「証人」の言葉に耳を傾けつつ、細野氏は当時の自らの判断の過ちも問うている。何が正しく、何が間違っていたのか。そして今、何が必要なのか。今も事故と福島県に向き合う細野氏に聞いた。(聞き手は本誌編集長の長岡義博)


――なぜ、いまこの本を出版しようと思われたのですか?

細野:震災から10年なので、記憶の風化を考えるとここがラストチャンスと思ったんです。2012年に原発事故直後の対応については政府・国会・民間と3つの事故調査報告書が出ていますが、2011年から12年にかけての政策決定の検証は十分には行われていない。その中で、明確にいくつか検証されるべきこと、改善すべき問題があると思っていました。それを書きたかった。

最後に掲げた6つの課題(編集部注:処理水の海洋放出、除染土の再生利用、甲状腺調査の根本的見直し、食品中の放射性物質基準値の国際標準への変更、危機管理に対応できる専門家育成、双葉郡を中心にしたと町村合併の検討)を提案するためには、誰と話すべきかを考えました。

いわゆる「政治家本」にはしたくなかった。一昨年、民主党から自民党会派に入ったのですが、政治家として残された時間に何をやるかを考えました。この3年間、ずっとそれを考えてきた。その中で書いた本です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米鉱工業生産、4月製造業は0.3%低下 市場予想下

ビジネス

米4月輸入物価、前月比0.9%上昇 約2年ぶり大幅

ワールド

EXCLUSIVE-トルコ、予算削減額は予想上回る

ビジネス

米金利維持が物価目標達成につながる=クリーブランド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中