コラム

サイバー攻撃を受け、被害が出ることを前提に考える「レジリエンス」が重要だ

2018年05月11日(金)18時30分

ルーマニアの「国民の館」で重要インフラストラクチャ保護フォーラムが開かれた photo: 土屋大洋

<サイバー攻撃を攻撃を受けることを前提にし、素早く復旧して被害を最小限にするというレジリエンスの考え方が重要になっている>

東欧のルーマニア首都ブカレストには、世界で二番目に大きな建築物といわれる「国民の館」がある(一番目は米国の国防総省)。この建物は、1989年の革命で夫人とともに銃殺されたニコラエ・チャウシェスクが「宮殿」として建てた。

共産主義国で「宮殿」というのもおかしいが、独裁者チャウシェスクは、同じ共産圏の中国や北朝鮮を訪問した際、巨大な建築に魅せられ、それに負けじと「宮殿」を作らせたが、その完成を見る前に処刑されてしまった。今は議事堂として使われている。

この国民の館で3回目となる重要インフラストラクチャ保護フォーラム(CIPフォーラム)が4月に開かれた。ルーマニアの周辺国を中心としながらも、米国、英国、イスラエルといった国々からもスピーカーが招かれ、日本からも私を含む二人が参加した。他にアジアからは韓国のサイバーセキュリティ企業社長が招かれた。

ブカレストではアジア人の顔を見ることが少ない。街中で小さい子供にじっと見られることがある。大人はそれほど露骨ではないものの、わざわざ「ニーハオ」と声をかけてくる人もいる。

重要インフラ保護フォーラム

国民の館の一室で開かれた重要インフラストラクチャ保護フォーラムにはおよそ数百人が詰めかけた。登壇者だけでものべ80人を超えている。私がパネリストを務めた二日目のパネルでは、なんと2時間半で19人のパネリストが割り当てられていた。単純計算でひとりあたり8分弱しかない。

tuchiyaPHOTO2.JPG

重要インフラ保護フォーラムの様子

一日目のパネルは、通信大臣や交通大臣など閣僚級のパネリストが多かったため、比較的時間通りに議事が進んだ。しかし、そうした閣僚が来ない二日目になると急に議事進行が緩み、スピーカーが延々と話しても司会が全く止めず、朝10時から昼12時半までの2時間半のパネルは、途中休憩を挟みながら14時半になっても終わらず、空港に急がなくてはならない次のパネルのスピーカーが割り込んで話し出すというおもしろいことになった。

プロフィール

土屋大洋

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。国際大学グローバル・コミュニティセンター主任研究員などを経て2011年より現職。主な著書に『サイバーテロ 日米vs.中国』(文春新書、2012年)、『サイバーセキュリティと国際政治』(千倉書房、2015年)、『暴露の世紀 国家を揺るがすサイバーテロリズム』(角川新書、2016年)などがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story