コラム

中国人は独裁者好きだが...プーチンにあって、習近平に「決定的にない」ものとは?

2023年04月22日(土)20時00分
プーチン大統領と習近平国家主席

プーチン大統領と習近平国家主席(2022年9月) Sputnik/Sergey Bobylev/Pool via REUTERS

<中国専門家の石平氏はインタビューで、習近平は中国人がリーダーに求める重要な資質を「決定的に欠いている」と述べた>

1989年6月4日の天安門事件をきっかけに、中国人であることを捨てたと述べる中国専門家の石平(せき・へい)氏。現在は日本を拠点に、作家として執筆活動を行っている。そんな石平氏に現在の中国情勢を聞くべく、先日、インタビューを行った。

■【動画】中国人はなぜ、毛沢東やプーチンといった独裁者を好み、崇拝するのか?

インタビューでは、中国を率いる習近平国家主席についての話になった。石平氏が言うには、習近平国家主席については「独裁者」であり、「中国人は(毛沢東もそうだったが)独裁者は嫌いではない」と言う。そして、14億人の運命を支配するには、独裁的なリーダーが必要であるという側面もあると言及する。

独裁者の特徴としては、古くからの知り合いや家族を側近として徴用する傾向があるように思うが、確かに習近平は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や北朝鮮の金正恩総書記と同じく、古くからの仲間を側近に置いている。劉鶴副首相は習近平と高校の同級生で、中央軍事委員会副主席の張又侠も小学生からの親友。中国共産党の中央組織部長である陳希は学生時代のルームメートで、中国共産党の人事を握っているという。

プーチンも元KGB(ソ連国家保安委員会)のスパイ時代からの仲間たちを側近として使っている。金正恩は「金王朝」を維持すべく血族を重要ポストに置いている。

習近平が独裁者であるという指摘について、香港を中国に返還した際に最後の総督だったイギリス人のクリス・パッテン元総督は、中国がイギリスとの国際的な約束を破って香港国家安全法を制定させた際に、中国が世界から批判されているのは習近平の責任であり、「習近平はこれまでとは違う独裁者だ」と指摘している。

独裁者として習近平に「決定的に欠けている」もの

その一方で、石平氏は習近平について、「決定的な欠如がある独裁者」であるとインタビューで述べている。その欠如とは、「カリスマ性」だという。そして中国人はリーダーにそのカリスマ性を期待しており、実はロシアのプーチン大統領が中国人の間で人気になっているという。

そして習近平が、そんなプーチンを意識しているかどうかはわからないが、自分にないカリスマ性を見せるために、「台湾」を使う可能性があるのではないか──。

「2049年までに世界の覇権を目指す」という習近平の現在地や、中国経済の実態、そして中国に帰国して石平氏を「論破した!」と日本叩きを続ける元日本在住・中国人ビジネスマンなどについて、石平氏にゆっくりと語ってもらった。

「スパイチャンネル~山田敏弘」の「石平さんと対談①独裁者好きな中国国民でも習近平は無理」をご覧いただきたいと思う。

プロフィール

山田敏弘

国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版、MIT(マサチューセッツ工科大学)フルブライトフェローを経てフリーに。クーリエ・ジャポンITメディア・ビジネスオンライン、ニューズウィーク日本版、Forbes JAPANなどのサイトでコラム連載中。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』、『CIAスパイ養成官』、『サイバー戦争の今』、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』、『死体格差 異状死17万人の衝撃』。最新刊は『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』。
twitter.com/yamadajour
YouTube「スパイチャンネル」
筆者の過去記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは155円半ばで底堅い、円弱含みが続

ビジネス

ホンダの今期、営業利益予想2.8%増 商品価値に見

ビジネス

オリンパス、発行済み株式の5.15%・1000億円

ビジネス

ホンダ、発行済み株式の3.7%・3000億円上限に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story