コラム

カタルーニャ、クルド、ウイグル 独立運動が世界を包囲する

2017年11月13日(月)11時35分

ユーラシア東部にも複数の「火薬庫」がある。新疆ウイグル(東トルキスタン)、内(南)モンゴル、チベットという中国の三大自治区だ。第二次大戦中、ソ連の線引きで新疆ウイグルと内モンゴルは中国の勢力圏とされ、戦後中国に占領された。スターリンはユーラシアに広がる強大なトルコ系諸民族を東西に分割。西トルキスタン(現在の中央アジア5カ国)だけをソ連圏に加え、東トルキスタンのウイグル人を隔離して中国に渡した。モンゴル国家の統一もソ連には脅威なので、南北に分割して南モンゴルを中国に渡した。

このように戦後の長きにわたって自由主義諸国も共産主義諸国も、ユーラシアの諸民族の自決精神を尊重しなかった。その付けが今、回ってきつつある。カタルーニャは、「ヨーロッパの身から出たさび」だけで済まないだろう。新疆でも中国の弾圧に抵抗してテロが起きるなど「パレスチナ化」が進んでいる。

2度の世界大戦後につくられた大国優先の国際秩序が見直しを求められている。

<本誌2017年11月14日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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