コラム

チャットGPTだけが言語AIじゃない。米大学が有力34モデルの性能を比較ランキング

2023年02月24日(金)08時00分

こうした動きに対抗しようとしているのが、世界中の研究者が開発に協力しているBigScienceと呼ばれるオープンプロジェクト。BigScienceは、BLOOMなど3個の基盤モデルを開発している。BLOOMは、フランス政府がスーパーコンピューターを提供するなどして開発に協力しており、AIが問題発言しないようにする技術の正確さで3位にランクインするなど、高い性能を誇っている。

同様に中国の清華大学を中心とするオープンプロジェクトは、中国語と英語のバイリンガル基盤モデルGLMを開発。GLMは、要約の正確さで5位にランクインしている。

この記事では、質疑応答、情報検索、要約、問題発言検知といった用途でのランキングのトップ5だけを紹介するが、スタンフォード大学基盤モデル研究所は詳細に渡って評価している。ただ同研究所は、純粋な言語モデルだけを比較している。Facebook(Meta)のCICEROは、対話エンジンと計画エンジンを合体させたモデルだし、GoogleのLaMDAは言語モデルを対話型に改良したモデル。なのでこのプロジェクトでは比較対象になっていない。今後こうした特定の用途に特化させた基盤モデルも次々と登場してくることだろう。今後開発したいサービスには、どの基盤モデルが合っているのか。しっかりと検討していただきたい。

ChatGPTはハイプサイクルを一気に駆け上がった。ここまで急速に期待値が高まったのだから、これから一気に幻滅期に向かう可能性が高い。AIは万能ではない。用途を狭く限定すれば人間以上の能力を発揮するが、用途を広く構えてしまえば問題を引き起こす可能性がある。虚偽の情報を拡散したり、差別発言をしたりして、社会問題や訴訟にまで発展するかもしれない。AIの基盤モデルを少数のテック大手が独占することに対する批判も、これから浮上してくることだろう。

言語AIはまだ黎明期。これかも技術革新が必要とされている。ブームに踊らされることなく、しっかりと腰を据えて社会に価値を提供し続けられるようなサービスを開発していただきたいと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story