コラム

トランプも無視できない存在に成長した、暗号通貨の「現在地」を知る意味

2019年07月26日(金)17時56分

暗号通貨を理解するなら、まずはすべての始まりであるビットコインとイーサリアムを起点にすべきだ znm-iStock

<激動の2017年を経て世界に定着した暗号通貨について知ることは、「業界外」の人間にも実利をもたらす>

「暗号通貨界隈は変化が早すぎる」と溜息混じりに言うのは界隈の人間だけで、大多数の人間にとっては暗号通貨(仮想通貨)は今も昔も「投機の対象」であり、「本源的な価値を持たない怪しげなもの」だろう。

しかし、実際のところ暗号通貨のイメージは、2017年を境に大手メディアでも界隈でも大きく変化してきた。

私が暗号通貨界に参入した2015年は、今とは対照的に「暗号通貨同士のトレードや特定の銘柄のホールドによって一攫千金を狙う」人は少なく、ビットコイン論文の著者であるSatoshi Nakamotoの思想に共感し無償で情報共有や技術開発を行ったり、ビットコインそのものの将来的な値上がりに期待してビットコインのみをホールドする人が多かった。

また、業界での起業も同様で「この業界でどのように事業として利益を出すか」は大きな課題として認識されており、国内外の取引所が既存の金融業界を驚かせるほどの利益を出し始めた2017年までこの認識は変わらなかった。

当時は今以上に暗号通貨の認知度は低く、暗号通貨といえば市場シェアの9割を占めるビットコインであり、ビットコインといえば東京を拠点にしていた取引所マウントゴックスでの流出事件というイメージであった。これらのイメージは強力で、大手メディアがビットコインを中立的、または好意的に取り上げることはほぼなく、誤解に基づいた報道も多かった。

当然、暗号通貨関連企業が大手メディアに広告を出すような状況ではなく、当業界での起業は完全に将来の需要をターゲットにしたものであり、今以上に先見性とリスクテイクが必要であった。

その後、正しい予測と適切な実行力を持った企業やベンチャーキャピタル(VC)は莫大なリターンを獲得し、現在はこれらのリターンを再投資する形で業界内で資金が還流している。イーサリアム関連のプロジェクトに大きく投資するConsenSysや、CoinbaseやRippleに初期投資したアンドリーセン・ホロウィッツは好例だ。

2010年以降のビットコインを巡る物語は、今も界隈に残る著名人のエピソードも含めてナサニエル・ポッパー著の『デジタル・ゴールド』(邦訳・日本経済新聞出版社)が詳しい。ビットコインが数ドル程度で取引されていた時代において関係者が何を考え、どのように行動していたのかが説明されている。余談だが、東京は暗号通貨の聖地であったといっても過言ではなく、現在も業界を牽引する有名人の中には東京を拠点にしていた者が少なくない。

プロフィール

indiv

2015年にイーサリアムに出会い暗号通貨界隈へ参入。2017年からはフルタイムで業界の仕事に従事。フリーランスとして複数の企業に関与しつつ、暗号通貨関連の調査研究・アーカイブを行うTokenLabにて業界の経営者や投資家に対して知見の共有を行う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏ソジェン、第1四半期は減益も予想上回る 投資銀行

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story