コラム

ロックダウンで飲み過ぎ、食べ過ぎが加速する

2020年06月11日(木)17時30分

この生活で酒量が増えたり体重が増加しがち Daviles/iStock.

<ロックダウンによるストレスから多くのイギリス人の酒の量が増え、3分の2の人の体重が増えた>

ロックダウン(都市封鎖)が始まってからの12週ほどで、僕は過去1年分を上回る酒を飲んでいるようだ。何となくの感覚ではない。僕はつい飲み過ぎるたちだから、だいたいの酒量と頻度を記録している。

1年ちょっと前くらいからは、さまざまな「コツ」やら「ご褒美」やら「罰金」など、酒量を減らすいいシステムを考案してきた。これがなかなか効果があり、長続きするので、僕は満足していた。それが、ロックダウンで完全に均衡が破れ、気付けばほぼ毎日酒を飲むようになっている。二日酔いになるギリギリ手前くらいの量だ(自制心からここでやめているわけではない。翌日も確実に飲めるようにするためのずるい手だ)。

こんな調子なのは僕だけではない。ロックダウン中にワインの売り上げは急増した(コロナ禍で好調な数少ない業界の1つだ)。人々はいつもより早い時間から飲み始めているようだ(多くの人が5時解禁ルールだから、昼間の酔っぱらいが増えている)。

家で飲む習慣がなかった人々も、一線を越えた。たまに飲んでいた人は毎日飲む人に、毎日飲んでいた人はヤバい飲み方をする人に、ヤバい飲み方をしていた人はアルコール依存症へと突き進んでいく。特にイギリスとしては最悪の事態だ。この20年でイギリスではアルコール関連の肝臓病が、特に女性の間で劇的に増加しており、若い年齢でも罹患するようになっている。

さらに僕はロックダウン以来3キロ太った。これにはがっかりした。何年も過体重気味が続いた後、この1年間は体重を順調に減らして健康的なBMIに達していたからだ。ロックダウンがこれをひっくり返した。そしてやっぱり、こんな調子なのは僕だけではない。調査ではイギリス人の3分の2がロックダウンで体重が増えたという。その約半数が3キロ増以上だとの試算もある。

また繰り返すが、これもイギリスとしては最悪の事態だ。イギリスは既に肥満危機に陥っている。数キロ体重を増やすことは、多くの人を低リスクから中リスクにし、中リスクの人はハイリスクになり、ハイリスクの人は糖尿病になる。以前から既に健康リスクにさらされていた人々(都市部の貧困層や庭のない狭いアパートなどの住環境で暮らす人々)は、体重増加の悪影響が最も大きいのでは、と僕は疑っている。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能

ビジネス

債券・株式に資金流入、暗号資産は6億ドル流出=Bo

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇用者数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story