コラム

日本が直面する「8割経済」 業種別に業績をシミュレーションすると......

2020年06月10日(水)12時04分

KIM KYUNG HOONーREUTERS

<今年度は各業界で売上高が2割程度は縮小すると覚悟すべき。では、業績にはどれほどの影響が出るのか>

全国で緊急事態宣言が解除されたが、経済活動は以前の状態には戻っていない。企業が発表する業績予想やビッグデータを使った分析などから総合的に判断すると、今年度は例年との比較で8割程度の縮小経済を覚悟したほうがよいだろう。各業界で売上高が一律2割減となった場合の業績への影響について探った。

コロナ危機の影響があまりにも大きいことから、上場企業の多くは今期の業績について「未定」としているが、一部企業はこの状況下でも業績見通しを発表している。トヨタ自動車は2021年3月期について、売上高2割減、営業利益8割減としたほか、国際石油開発帝石も2020年12月期について売上高4割減、営業利益65%減との見通しを明らかにした。

NTTドコモがスマホの位置情報を基に実施した人口変動分析によると、5月29日時点における東京・大手町の人出は緊急事態宣言前との比較で76%にとどまっており、昨年との比較では4割という状況だった。

今後、順次、経済活動が再開されていくとはいえ、すぐに元の状態には戻らない。在宅が増えたことで逆に売り上げが増えた企業もあるが、多くの業界において従来との比較で経済活動が2~3割のマイナスになると考えたほうがよさそうだ。

仮にあらゆる業種で売上高が2割減ると、企業の業績にはどのような影響が及ぶだろうか。法人企業統計を使って筆者がシミュレーションしたところ、資本金10億円以上の大企業の場合、全業種で売上高が2割減ると、全体の営業利益は67%下落する(売上高の減少に応じて、売上原価が一定割合で減少すると仮定)。

赤字転落する業種は?

製造業全体では82%のマイナスだったが、トヨタ自動車の営業利益は8割減の予想なので、シミュレーション結果と大筋合っている。同じ製造業でも繊維や印刷などは耐性が弱く、売上高が2割減ると赤字転落してしまう。

非製造業全体では営業利益は6割減となっているが、当然ながら赤字転落する業種も出てくる。営業赤字になるのは小売り、卸、ガス、宿泊、飲食といった業界である。小売り、宿泊、飲食については、外出制限などによって経営が苦しくなっていることは多くの人が認識しているだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story