コラム

コロナで変わったドル円相場の新ルールとは?

2021年01月15日(金)12時25分

短期的には円安要因と円高要因が拮抗し、長期的なインフレ予想についても両方の要因が存在する以上、劇的には動かない可能性が高い。しばらく104円前後を軸にした展開が続き、バイデン政権の経済政策が具体化するにつれてアメリカのインフレ期待が高まり、徐々にドル安が進むシナリオが考えられる。

もっとも2020年後半からアメリカの長期金利が上昇に転じており、債券の投資家は金利上昇が本格化するのか見極めようとしている。仮にアメリカの長期金利上昇に弾みがつけば、インフレ傾向もよりはっきりしてくるので、さらにドル安に傾く可能性も高まる。ただ、それまでにはしばらく時間がかかるだろう。

日本はアメリカと違い、量的緩和策をやめるにやめられない状況に陥っており、本来なら日本円にはさらに下落圧力が加わっても不思議ではない。この動きが顕在化すればドル安を相殺する効果をもたらすが、日本の物価は横ばいが続いており、今のところインフレが進む兆候は見られない。アメリカ経済に大きな変化がなければ、為替市場は意外と安定的に推移するだろう。

<2021年1月12日号「2021年に始める 投資超入門」特集より>

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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