コラム

なぜ文政権の支持率は低下し続けるのか?

2021年04月26日(月)11時47分
韓国の文在寅大統領

国民の人気を失った文在寅大統領 REUTERS

<スキャンダル続きでワクチンの確保もできない文政権に国民の半数以上が「鬱憤」を感じている>

文政権の支持率低下の傾向が鮮明になってきている。韓国の世論調査会社リアルメータが調査した2021年4月2週目の文政権の支持率は34.7%で、過去最低値を記録した4月1週目の33.4%に比べて1.3ポイント上昇したものの、まだ30%前半の低い水準にとどまっていることが明らかになった。

年代別の支持率は 70代が24.3%で最も低く、次いで、60代(24.6%)、20代(29.8%)、30代(40.0%) の順であった。特に政権初期に高かった20代の支持率低下が目立つ。一方、政党支持率も野党の「国民の力」が37.1%で、与党の「共に民主党」の30.0%を大きく上回っている。

文政権や与党「共に民主党」の支持率低下は、来年3月の大統領選の前哨戦となった4月7日のソウルと釜山のダブル市長選挙の結果からも確認できた。いずれも最大野党「国民の力」の候補が勝利しており、与党「共に民主党」には大きな打撃を与えた。

朴槿恵(パククネ)前大統領が弾劾されてから、当時の与党であった「国民の力」に対する有権者の否定的なイメージは大きく変わっていない。それにもかかわらず、「国民の力」が4月のダブル市長選挙等で勝利したのは、文政権の経済政策が成果を得ず、また、与党「共に民主党」の不祥事が相次いでいたからである。有権者の多くは野党「国民の力」を良く思っていないものの、「このまま与党『共に民主党』に国を任せても何も解決されない。何か変化が必要だ」と思い、「国民の力」を支持した可能性が高い。

■韓国における文在寅大統領の支持率
210426kim.png
出所)リアルメータのホームページより筆者作成

文政権の、支持率の低下を招いた要因としてまず考えられるのが「指導部を中心とした公正の欠如や相次ぐ不祥事」である。特に、2019年9月に法務部長官に任命された曹国(チョ・グク)氏の資産形成過程の不透明さや娘の不正入学疑惑などは、国民が文政権の公正さを疑う引き金となった。曹国氏の問題がなければ、文政権の支持率は現在よりかなり高かった可能性がある。文政権にとっては大きな痛手となったに違いない。

曺国氏のスキャンダルに対して、多くの若者は怒りや鬱憤を感じることになった。2019年10月にソウル大学のユミョンスン教授等が発表した調査では、回答者のうち、慢性的に鬱憤を感じている人の割合は43.5%に達した。

鬱憤とは、「外部から攻撃されて怒りの感情ができ、リベンジしたい気持ちになるものの、反撃する力がないため、無気力になり、何かが変わるという希望も無くなった状態に屈辱感まで感じる感情」であると定義されている。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

気候変動リスク推計、米銀はデータとモデルに大きな課

ビジネス

経常黒字が過去最大25兆円超、増える投資収益 国内

ビジネス

消費支出、23年度平均は前年比3.2%減 物価高響

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、米利下げ観測の強まりを好
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 5

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story