コラム

「アンドルー王子は性的人身売買の犠牲者であることを知って性行為に及んだ」性接待を強いられた女性が訴え

2021年08月12日(木)19時48分

・エプスタイン氏は1999~2007年、米フロリダ州パームビーチの邸宅、アメリカや海外の他の場所で30人以上の未成年の少女を性的に虐待した。エプスタイン氏は自分だけでなく他の権力者にも少女を性的に虐待するように勧めていた。有給の従業員を使って未成年の女の子を見つけては邸宅に連れて来させた。

・バージニアさんも他の未成年者を同じように最初はマッサージを提供するために、そしてその後エプスタイン氏に対するさまざまな性的行為に従事するためにリクルートされた。バージニアさんはエプスタイン氏の要求に応えるために国内外の旅行に頻繁に同行した。エプスタイン氏に定期的に虐待され、性的な目的で他の権力者の男性に貸し出された。

仲介役は英社交界のご令嬢

・バージニアさんが性的目的で貸し出された権力者の一人がアンドルー王子だ。アンドルー王子は英メディア王ロバート・マクスウェル氏(故人)の娘で英社交界の名士ギレーヌ氏と親しかった。ギレーヌ氏は何年にもわたってエプスタイン氏の性的人身売買ネットワークの監督と管理を担当し、バージニアさんを含め少女を積極的にリクルートした。

・アンドルー王子は99年にギレーヌ氏を通じてエプスタイン氏と知り合った。その後、バージニアさんを性的に虐待した米ニューヨーク市のエプスタイン氏の邸宅やギレーヌ氏が所有するタウンハウスなど世界中にあるエプスタイン氏の邸宅に頻繁にゲストとして招かれるようになった。

・エプスタイン氏の性的人身売買活動の範囲を知らなかったように装って犠牲者への同情を示したあと、アンドルー王子はエプスタイン氏と共謀者らに対する捜査と起訴に関して米当局への協力を拒否した。17歳の時にアンドルー王子から性的虐待と暴行を受けたバージニアさんの身体的、心理的被害は深刻で長く続いている。

・億万長者のエプスタイン氏は権力者と幅広い交友関係を築き、無制限に見える富を利用して自分自身や共謀者、世界で最も強力な権力者たちのために性的人身売買ネットワークを構築した。若い女性を操縦し、虐待する性的人身売買スキームを完成させた。

少女の弱みにつけ込み、飼い慣らす

・ギレーヌ氏はエプスタイン氏の性的人身売買企業で最高位リクルーターだった。彼女自身、エプスタイン氏の性的人身売買事件で起訴され、秋に刑事裁判が始まる。ギレーヌ氏や別の女性リクルーターは少女たちが抱える弱さについて素早く学ぶため、少女に近づいて話しかけた。学校、スパ、トレーラーパーク、街頭などがリクルートの場所だった。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、S&P500年末予想を5500に引き上げ

ビジネス

UAE経済は好調 今年予想上回る4%成長へ IMF

ワールド

ニューカレドニア、空港閉鎖で観光客足止め 仏から警

ワールド

イスラエル、ラファの軍事作戦拡大の意向 国防相が米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story