コラム

勝新太郎の本領とすごさ──徒花的な『座頭市』はまるで勝新そのもの

2021年06月17日(木)19時50分

彼の本領とすごさは、1980年に放送を始めたテレビドラマ『警視-K』で発揮されている。あえて脚本はアバウトに仕上げ、セリフはほぼ俳優たちのアドリブ。だからアフレコは不可能だ。全て現場で同時録音。ノイズも交じる。第1話オンエア中から放送局である日本テレビには、「言葉が聞こえない」「意味が分からない」などと抗議の電話が殺到したという。ほとんど実験映画だ。1人でテレビドラマのヌーベルバーグをやろうとしたと評する人もいる。結局は1クールで打ち切られた。

座頭市は邦画における徒花(あだばな)的な存在。そしてそれは、日本芸能史における勝新のポジションと、見事な相似形を成している。

magmori210617_zatoichi2.jpg『座頭市物語』(1962年) 
監督/三隅研次
出演/勝新太郎、万里昌代、島田竜三、三田村元

<本誌2021年6月22日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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