コラム

海外におけるコロナ対策違反飲食店の罰金事情──消費者も問われる責任

2021年01月07日(木)11時40分

イタリア・ローマのカフェ(2020年5月18日) GUGLIELMO MANGIAPANE-REUTERS


・ロックダウンや夜間外出禁止の措置がとられている国では、違反した飲食店に罰金、免許停止などの罰則が導入されている

・その一方で、飲食業に限らず、サービスを提供する事業者だけでなく消費者にも罰則が盛り込まれている国が多い

・日本政府は時短要請などに違反した飲食店などに罰則を科すことを想定しているが、だとすれば消費者もその対象にしなければ、政府のいう「実効性を高める」効果は半減する

何事にも程度があり、ここまで至れば個人の良識を尊重したコロナ対策に限界があると言わざるを得ない。

焦点としての罰則

首都圏を中心にコロナ感染者が急増する状況を受け、特措法改正の議論が加速している。焦点の一つが、休業や営業時間短縮の要請に応じない飲食店など事業者への罰則を盛り込むかだ。

政府は対策の実効性を重視し、補償と罰則をセットで検討しているのに対して、立憲君主党や共産党からは「私権制限」への警戒と反発も強い。

政府は罰金の徴収(過料)や店名公表といった罰則を想定しており、懲役といった刑事罰に関しては明らかでない。一方、野党でも国民民主党などからは、条件つきだが「罰則または懲役」の案が示されている。

日本の場合、コロナ以前に緊急事態に対応する法整備がされていなかったことがこうした泥縄式の対応になったわけだが、それでは日本より厳しいロックダウンや夜間外出禁止が実施されている国では、どのような罰則が設けられているのか。以下で、主な国をあげてみていこう。

諸外国における罰則規定

ほとんどの国の罰則は過料が基本だが、違反を繰り返すなど悪質な場合には、懲役や営業許可の停止などが導入されている国もある。

【アメリカ】

感染が拡大するニューヨークでは、営業規制に違反した店舗に1万ドル(約103万円)の罰金が科されるが、これに基づいて12月初旬までに1,867店が摘発され、279店の酒類販売許可が停止された。

もっとも、同じアメリカでも州ごとに事情は異なる。カリフォルニアでは経営者への「啓発」を優先させており、過料や営業許可の停止などは行われていない。

【イギリス】

イギリスでは6日、3度目のロックダウンが発令されたが、それ以前から南部のイングランドで飲食店の営業が18時までしか認められておらず、これに違反すれば最大1万ポンド(約140万円)の罰金が科されていた。スコットランドやウェールズなど、他の地方では罰金がもう少し安い。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の発言要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story