コラム

ロシア疑惑の捜査が「終結」しても、復讐に燃えるトランプ

2019年03月28日(木)19時30分

最近でも「自分はマケインを尊敬しない」と故人を冒涜したり、マケインの娘であるメーガン・マケイン氏に対して激しい罵倒ツイートを浴びせたり、とにかく憎しみが続いているようです。仮に、「オバマケア全廃」に成功すれば、その故マケインのレガシーも消し去ることができるというわけです。

この「オバマケア全廃」ですが、もちろん、現在の議会では民主党が下院の過半数を握っているために、まず法案が通る見込みはありません。そこで、大統領としては、連邦最高裁の「オバマケア合憲判決」をひっくり返したいという思惑があるようです。ですが、そうなると保守派でありながら、現在は「スイング」つまり保守とリベラルの立場を入れ替えながら全体の判決のバランスを取る、つまり中道的な判断に傾いているロバーツ最高裁長官を名指しで批判するのに等しく、三権分立への重大な挑戦ということになりかねません。

せっかく「訴追なし」という結果を勝ち取ったにもかかわらず、大統領は相変わらず「怒りに燃える復讐の鬼」といった、国内における政治的メンツの獲得ゲームに興じるばかりです。

そんななか、中国との通商交渉は展望が開けていませんし、ロシアに至ってはアメリカに至近のベネズエラを舞台に「本格冷戦」を仕掛けようと、挑発を繰り返しています。そんなわけで、今後も「トランプ政局」は不安定なまま、2020年の大統領選になだれ込んでいく雲行きです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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