コラム

空港アクセス鉄道への反対運動に参戦した、オカシオコルテス下院議員の目算

2020年01月21日(火)18時00分

サンダース(左)の応援で党内中道派への批判を強めるオカシオコルテス(右) Monica Almeida-REUTERS

<民主党予備選が佳境を迎えるなかで、自分の師匠にあたるサンダースの支援のために左派の立場を鮮明にするAOC>

ニューヨークには大空港が3つあります。世界各国のエアラインが乗り入れる国際ターミナルを備え、デルタ航空、アメリカン航空、ジェットブルー航空の拠点であるジョン・F・ケネディ国際空港と、同じく世界各国から乗り入れがあり、同時にユナイテッド航空の巨大ハブであるニューアーク・リバティー国際空港は、ほぼ容量的に一杯一杯となっています。

そこで近年は、国内線専用の第3の空港であるラガーディア空港にあらためて注目が集まっています。デルタをはじめ、アメリカン、ユナイテッドなどの航空会社は、JFKやニューアークの発着枠からあふれた便をラガーディアに回していますし、ターミナルの改築なども進んでいます。

問題は空港アクセスで、JFKやニューアークはマンハッタンまでの鉄道ルートがあるのですが、ラガーディアにはありません。ですから、マンハッタンまでは「タクシー」か「バス」または「途中の駅までバスで以降は地下鉄」という交通手段になり決して便利とは言えませんでした。

そこでニューヨーク州のクオモ知事が主導して「ラガーディア・エアリンク鉄道」という構想が進んでいます。これは空港から専用線で鉄道(遠隔操作のモノレール)を「ウィレッツポイント駅」まで建設するというもので、同駅からは地下鉄7号線もしくはロングアイランド鉄道(LIRR)でマンハッタンまでつながっています。

既に計画は承認されて、今年2020年には着工の予定でしたが、ここへ来て反対運動が高まっています。

マンハッタンへ「遠回り」のルート

理由としては、まず遠回りということがあります。ラガーディア空港からウィレッツポイント駅までは一旦東に向かう感じとなり、ウィレッツポイント駅から地下鉄やLIRRでマンハッタンに向かう際には反対に西行きに乗ることから、全体としてはかなりの遠回りになるのです。

また地下鉄7号線は、そもそもクイーンズ区の人々の通勤路線ですし、さらにウィレッツポイントには野球のニューヨーク・メッツの本拠地であるシティ・フィールドがあります。メッツの試合日には、空港利用者と野球ファンで混乱すると言うのです。混んでいる地下鉄にスーツケースを持った空港利用者が乗り込む余地はないという意見があります。

また、空港の利用者は多くの場合はマンハッタンへ向かいますが、空港職員はニューヨークの他の区、例えばブルックリンとかブロンクスに住んでいるので、このアクセス鉄道では、ニューヨークの他の区に行くには、一旦マンハッタン島に入る必要があり、「使えないルート」だという批判もあります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾議会、改革巡り紛糾 野党案への抗議で数百人がデ

ワールド

中国の過剰生産能力、欧米は連携して対応する必要と米

ワールド

ロシアの制裁逃れ対策強化を、米財務長官が欧州の銀行

ワールド

シリア大統領夫人、白血病と診断 乳がん克服から5年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story