コラム

夫婦別姓に反対する保守派の本音はどこに?

2020年12月10日(木)16時00分

一つ想像できるのは、「嫁」が旧姓で学術やビジネスの世界で活躍すると、自分や息子が惨めになると勝手に思い込んで「嫁」の悪口を言う姑が、せめて戸籍だけでも自分の「家」に入って同姓にしてくれていると多少態度が落ち着くようになり、孫への悪影響が減るというストーリーはあるかもしれません。ですが、そうした個別で個人的な心情が政治的な主張に発展するというのは不自然です。

考えられるのは、「古き良き日本」という意味不明の幻想があって、その幻想が一つ一つ崩れていくのが苦痛だという、極めて概念的な原理主義ということです。であれば、アメリカの宗教保守票とか、イスラム圏の原理主義的な心情と同種のものとして頭では理解できます。

それが心情のレベルまで食い込んでいるので票になるということなのでしょうが、それでも、どうしてこの問題なのかというのは、やはり納得がいきません。「日本の家族」を守り、「子どもの心情」に寄り添いたいのであれば、「ローテーション目的だけの転勤や単身赴任」「長時間労働」「儀礼や社交目的の宿泊出張」などをやめるか減らす方がはるかに大切だと思うのです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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