コラム

パンデミック下のスーパーボウル、感染拡大は避けられない?

2021年02月02日(火)16時40分

タンパベイ・バッカニアーズの地元開催と盛り上がる要素が満載のスーパーボウルだが Brad Mills-USA TODAY Sports-REUTERS

<アメリカ人にとっては真冬に大勢が集まって盛り上がる恒例行事、感染拡大の契機になると懸念されている>

来週日曜の2月7日には、アメリカ最大のスポーツイベントである「スーパーボウル」が開催されます。NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の優勝を決定するポストシーズン最終戦で、ここへ来るまでに今年の場合はレギュラーシーズンを16試合、ポストシーズン戦(2試合または3試合)を勝ち抜いてきた2チームが対決します。

問題は、今年の場合、新型コロナウイルスの感染拡大のさなかに行われることです。アメリカ人の大好きな、そして通常であれば盛り上がるイベントであるだけに、感染拡大が懸念されています。

まず、試合の会場ですが、フロリダ州タンパのレイモンド・ジェームス・スタジアムです。ここは通常のNFLの試合では7万5000人の収容人員がありますが、今回は感染対策ということで2万2000人に観客を制限して行われます。本来、今回のスーパーボウルの会場は、カリフォルニア州ロサンゼルスに決定していたのですが、工事の遅延のためタンパに変更になりました。

NFLはパンデミックの中でのシーズンということで、これまでは観客を収容人員の20%程度に抑えていましたが、このスーパーボウルでは観客数を拡大しています。但し、2万2000人のうち7500人はこの地域の医療従事者で、すでにワクチンを接種済みの人に無料チケットを配付して招待することになっています。

パーティーで観戦するのが恒例行事

また、スーパーボウルの呼び物である、国家独唱やハーフタイム・ショーについては、試合の会場ではなく別の場所からリモートで参加する予定です。

そんなわけで、感染拡大のなかで対策しながらの開催ということですが、それでもこのスーパーボウルを契機とした感染拡大はかなり強く懸念されています。それは、試合会場での感染ではなく、もっと幅広い大規模なリスクがあるからです。

他のスポーツイベントと違って、このスーパーボウルには特徴があります。例えば、野球のオールスターやワールドシリーズというのは、確かに盛り上がりますが野球ファン以外の人までテレビ観戦することはありません。バスケットのNBAのファイナルもそうですし、アイスホッケーのNHLもそうです。

ところが、スーパーボウルだけは、複雑なアメリカンフットボールのゲームルールを完全に理解していない人、従って通常のNFLのレギュラーシーズンやプレーオフの試合には興味のない人まで、観戦して盛り上がります。そして、多くの場合、家族だけでなく、友人や近隣の人々など大勢でパーティーをしながら観戦するのが恒例行事となっています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシアGDP、第1四半期は前年比4.2%増 輸

ワールド

ニューカレドニアに治安部隊増派、仏政府が暴動鎮圧急

ビジネス

訂正-中国の生産能力と輸出、米での投資損なう可能性

ワールド

米制裁は「たわ言」、ロシアの大物実業家が批判
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story